アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「星見…悠理兄さんかぁ。なんか女みたいな名前だな」

ほっとけ。

「ま、良いか…。それより、先に新校舎を見たなら、こっちに来て驚いたろ?」

雛堂の言う「こっち」とは、今俺達がいる旧校舎のことだろう。

「自分も初見のときはビビったわ。学校パンフには、新校舎の写真しか載ってなかったしな」

やっぱり、雛堂も騙されたのか。

学校のパンフレットには、綺麗な新校舎の写真しか載っていなかった。
 
まさか、旧校舎はこんなにボロ…いや、趣のある古い校舎だったとは。

いくら言葉を綺麗に取り繕っても、ボロいものはボロい。

「女子部の新入生は、新校舎の講堂で入学式挙げてるんだろ?だったら、男子部もそっちに混ぜてくれれば良かったのにな」

「無理無理。この学校で、男子生徒が女子部の連中と対等に並ぼうとする方が間違ってるよ」

と、雛堂は当たり前のように言った。

…どういう意味だ?

俺が怪訝そうな顔をしているのを見て、雛堂は何かを悟ったようだった。

「…ははーん?お兄さん、あんたさては、何も知らずに入学したな?」 

ぎくっ。

仕方ないだろ。高校に進学するつもりなんて、つい先月までなかったんだから。

突然入学が決まって、事前情報もろくに仕入れずに来たのだ。

「聖青薔薇学園なら高嶺の花だろうって、たか括ってたのかもしれないけど…」

「違うのか?」

「まぁ、あながち間違っちゃいないね。実際女子部の方は、お嬢さん揃いだし」

だよな。

うちのお嬢さんとかな。

「でも、それは女子部の話だよ。同じ学校でも、男子部の方は全く別物だと思った方が良い」

…と、雛堂は言った。

全く別物…同じ学校なのに?

確かに…わざわざ入学式の会場を別々にするくらいなのだから、多少格差はあるようだが…。

「見ての通り、新入生の数も少ないだろ?」
 
確かに。

新校舎は、新入生とその父兄で賑わっていたのに。

旧校舎なんて、たった10数名分のパイプ椅子しか置いてない。

「女子部の新入生は、余裕で100人越えてるらしいぜ」

「マジかよ、そんなに…?」

じゃあ、十倍近く新入生の数に差があるってことか?

凄いな。それ、もう男子部作る意味ある?

「元々この学校、女学校だからな。聖青薔薇学園と言えばお嬢様学校、っていうブランドイメージ?みたいなのが出来上がってるし」

それは分かる。

俺も最初に、この学校に入学させられるって聞いたとき、驚いたもんだ。

女子校だと思ってたのに、まさか男子部があったなんて。

「そのせいで、そもそもこの学校を受験する男子生徒の数が少ないし…。その上、この校舎だろ?まともな奴なら、オープンスクールでこの校舎を見ただけで受験するの辞めるわ」

自虐的に笑いながら、雛堂はそう言った。