アンハッピー・ウエディング〜前編〜

一時間後。

「ふー、買った買った」

購入した服を入れたのはビニール袋を、両手に抱えて退店。

買い物終了である。

本当に、全部俺が選ばされた。 

後になって文句言うなよ。マジで。

俺も途中からよく分かんなくなって、出来るだけシンプルで無難なデザインを選んでしまった気がする。

今度はもっと、最新の流行とか流行りの色とか、研究しておくよ。

…って、今度なんて無ぇよ。

次は自分で選んでくれ。頼むから。

今日選んだのは、これから着る春用の服だから。

多分夏になったら、また夏服が必要になるんだと思う。

夏服も持ってないだろ、この人。

夏服を買いに行くときは、俺はもうついていかんからな。

それまでに、自分で選んで自分で買うということを学んでくれ。

全く…小学校低学年の子供ですら、駄菓子屋で自分の好きなお菓子を選んで買えるというのに。

高校生にもなって、自分の着るものすら選べないとは…。

箱入りにも程があるぞ。

文句の一つでも言ってやろうか、と思ったが、その前に。

「ねぇねぇ、悠理君」

お嬢さんの方から、くるりと振り向いて話しかけてきた。

「何だよ?」

「この後はどうするの?もうおうちに帰るの?」

あー、そうだな…。

ちらりと腕時計を見ると、時刻は午前11時30分過ぎ。

まぁまぁ良い時間だな…。ランチには少し早いが。

でも、今からバスに乗って家に帰ってたら、余裕で正午を過ぎるだろうし…。

「お嬢さんさえ良ければ、何処かで昼飯、食べて帰るか?」

帰ってから作るのも面倒だしな。

折角出掛けてきたんだし、今日くらい外食しても良いんじゃないか。

学校始まったら、そんな時間も取れないだろうし。

「本当?良いの?」

「良いよ」

「やったー」

喜ぶのかよ。

食べることに興味なさそうな顔してる癖に、それでもどうせなら、美味しいものを食べたいらしい。

それなら、山程ある好き嫌いを少しは減らしてくれ。

お嬢さんが食べられるように、いちいちニンジンを星型にくり抜くの、地味に面倒なんだぞ。

まぁ、口に出しては言えないけどな。

そんなお嬢さんの面倒を見るのが、俺の役目なんだから。

そういう小言は、ぐっと飲み込んで…。

「それで?何処で食べようか」

「んー。そうだなー」

軽いノリでお嬢さんに尋ねて、ちょっと後悔した。

どうしよう。回らないお寿司食べに行こう、とか言われたら。

だって、無月院家のお嬢様だぞ?

外食と言えば、高級料亭とか、高級イタリアンとか高級フレンチとか。

そういうものを当たり前のように食べつけている人と、気軽に外食なんて無理だぞ。