アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「どんなの選んだら良い?上着?ズボン?」

と、お嬢さんは尋ねてきた。

上着でもズボンでも、お好きなように。

「いや、だから…それも好きなのを選んだら良いんだよ」

あんたがどういう形の服が好きなのか、俺には分からないけどさ…。

春とはいえ、まだ肌寒い日もあるし…。

「薄手のセーターなんかどうだ?」

こっちに、淡い若草色のセーターが置いてある。

「それから…これから暖かくなったら、もう少し薄い…ブラウスとか」

黄緑色の、リボン付きのブラウスを指差した。

あとは、そうだな…。

緑が好きだとは言っても、あんまり緑色ばっかりだと悪目立ちしそうだし…。

「この、白いスカートとか…。緑のセーターやブラウスによく合うんじゃないか?」

俺にはファッションセンスの欠片もない、ましてや女モノの服のことなんてさっぱり分からんけど。

緑色と白なら、合うんじゃないか?多分。

あと、必要なものと言ったら…。

「羽織るものがあったら便利なんじゃないか?」

特にこれからの季節は、肌寒い日もあれば、暑くなる日もあるだろうし。

上にサッと羽織るものがあれば、出先でも簡単に体温調節出来るだろう。

「あ、ほら。このマネキンが丁度良さそうなの着てるぞ。…でも、色がベージュだから嫌なのか?」

緑色があれば良かったんだが。

改めて探してみると、緑色の服って、あんまり多くないのな。

白、黒、ピンク、水色、グレー辺りは大抵揃ってるんだけど。

緑色って、あんまり皆好きじゃないのだろうか。

俺は悪くないと思うけどな…。

…って、俺の好みなんてどうでも良いんだよ。

俺が着るんじゃないんだから。

「ごめん、勝手にあれこれ言って…。あんたの着る服なんだから、あんたが決めるべきだよな」

「ふぇ?ううん。自分じゃよく分かんないから、悠理君に選んでもらった方が良いよ」

「あ、そう…」

…良いのか?それで。

俺は別にスタイリストでも何でもないし、女モノの服を選ぶなんて今日が初めてなんだが…。

「さっき悠理君が言ってくれた奴、全部買おーっと」

おい。もうちょっと考えてから買えよ。

値段は気にしなくて良いにしても、せめて試着くらい…。

と言うか、服のサイズ。服のサイズくらいは見ろって。

「あんた…服はMサイズで良いのか?」

「えむって何?」

服のサイズくらい知っとけよ。小さかったり大きかったりしたらどうすんの?

やっぱり試着した方が良いって。

その前に、まず自分で選ぶべきだろ。

…それなのに。

「ねぇねぇ、他にどんな服が良いかな?」

自分で選ぶ気、ゼロ。

結局俺に選ばせるのか。そうなのか?

責任を転嫁するつもりじゃないだろうな。

「…自分で選べよ」

「悠理君に選んで欲しい」

何で俺に?

頼るべき相手間違ってるだろ。絶対。

他に頼めそうな人がいないからなのか?妥協して俺に頼んでる?

…。

俺は選ばないから、自分で選べ…と。

言ってやりたかったが、期待の眼差しでじーっとこちらを見つめるお嬢さんを見ていると。

…結局、駄目とは言えなかった。

「…後で文句言うなよ?」

「うん、分かったー」

よし。

じゃ、選んでやるよ。にわかスタイリスト爆誕だな。