「あんたって人は…。他に食べたいものはないのかよ?」

「え?だって、悠理君のオムライスが一番美味しいんだもん。世界で一番美味しいよ」

それは盛り過ぎだって。

「それに、悠理君が私に初めて作ってくれた料理でしょ?」

「…そうだっけ?」

「だから、私にとって思い出の料理なんだ」

…そうなんだ。

じゃあ、あの時オムライスじゃなくてカレーとかグラタンにしてたら。

今頃、リクエストはカレーとかグラタンになってたのかもな。

「悠理君のご飯は何でも美味しいから、何でも良いけど…」

「いや、うん…。分かった。じゃあオムライス作るよ」

「やったー」

そこまで言われちゃ、別のもの作りますとは言えんだろ。

良いよ。今日もオムライス作るよ。

俺、この半年で、オムライス作るのめっちゃ上達してる気がする。

「おっきい奴ね、おっきいの。私、お昼ご飯食べ損ねちゃったから、お腹空いてるの」

「はいはい、任せろ」

「あとね、国旗は日の丸が良いな」

「分かった分かった」

ちょっと待っててくれ。すぐ準備するから。

…チョロい奴だよな、俺って。

まるで、円城寺より自分を選んでもらったような気がして。

それが嬉しいなんて。馬鹿みたいに…。

「やっぱり、悠理君は優しいね」

「あ?そうか?」

「うん。私、悠理君のことが一番好きだよ」

「あぁ、うん…そうか」

…ん?

俺の…「料理が」一番好きって意味だよな?

「今度はね、今度は悠理君と一緒にお出掛けしたいな」

「え?あぁ…そうだな。良いけど…俺はオペラだのミュージカルだのは疎いぞ」

「私もよく分かんない」

芸術のセンス、皆無でごめんな。

感性が貧弱な者同士、お似合いということかもしれない。

「でも、何処でも良いや。悠理君と一緒なら、きっと何処でも楽しいもん」

「…そうだな」

なんてことはない。

寿々花さんの方が、俺よりずっと自分の心に素直だな。

お互い、望んでもいないのに、大人に勝手に決められて…一緒に住むことになって。

果たしてどうなることやら、一生憎々しい相手と添い遂げなきゃいけないのかと、覚悟してたもんだが…。

「…結局、あんたで良かった、ってことかな」

「…ほぇ?」

「いや、何でもない」

独り言だよ、ただの。

…さてと、それじゃあ。

寿々花さんが喜びそうな、日の丸付き特大オムライス、作るとするかな。




















to be continued…