アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「別に…好きなのを選べば良いんじゃないか?…今、何が流行ってるのか知らんけど…」

あ、マネキンか?マネキンが着てる服が、最新の流行なんだろうか。

「?でも、どれでも良い訳じゃないでしょ?」

「え?どれでも良いんじゃないのか?何か問題なのか?」

サイズさえ合っているなら、どれでも良いだろ。

パンツスタイルだろうが、ワンピースだろうが。

お嬢さんの好きな服を選べば良い。

あ、でも出来れば、洗濯機で洗濯出来る服にしてくれると有り難い。

でも、何処ぞのブランド服ならともかく。

いまむらに売ってる服なら、大抵は洗濯機で洗濯可能だろうけど。

「…」

「…」

何が問題なのか分からないが、お嬢さんは不思議そうに首を傾げている。

…大丈夫か?

何がネックなんだ?何が気になってる?

「…どうした?」

「…決まってるんじゃないの?どの色じゃないと駄目とか、どんな形じゃないと駄目とか…」

え?

一体、誰にそんな成約をされた?

「あのな…。制服じゃないんだぞ?普段着なんだ。学校のときならともかく、普段家で着る服なんだから、好きなのを選んで良いに決まってるだろ?」

「えっ。でも…黒じゃないと駄目?白い方が良いの?」

まさか。

「白でも黒でも、赤でも青でも。黄色でも緑でも何でも良いよ」

金ピカでも良いぞ。金ピカの服なんてなかなかないと思うけど。

「!何色でも良いの?これでも?これも良いの?」

お嬢さんは、手近にあったハンガーにかけてある、青やグレーのセーターやブラウスを指差した。

勿論だ。

「良いよ。お嬢さんの好きな色で良い」

「本当?」

「あぁ。あんた、何色が好きなんだ?」

「私は緑色が好きだよ」

緑か。それは珍しいな。

女の子は、ピンクやオレンジが好きなもんだと…。

って、それは偏見か。

女だって、青や緑、黒っぽい色の方が好きだって人もいるだろう。

「緑か。じゃあ、緑色の服を選んだらどうだ?」

「本当?本当?良いの?」

「良いよ」

「やったー」

好きな色の服を選んで良いと言われただけで、この喜びよう。

つくづく…自分の服でさえも、自分の意志で選んだことないんだなって。

買い物についてきて良かった。

こんな調子だと、このお嬢さん、一人で買い物に行かせても、何も買えずに手ぶらで帰ってきそうだ。