アンハッピー・ウエディング〜前編〜

手持ちのスマホで、一番近くにあるファッションセンターいまむらの支店を検索。

幸い、バスで20分くらい行ったところにあった。

俺も、今後何か必要なものがあったら、ここで買い物するかな。

で、人生初いまむらのお嬢さんの反応は。

「おぉ…。凄い、見て。服がいっぱい売ってる」

服屋だからな。

「見て見て、ほら。マネキンがいっぱい服着てるー」

人生初のいまむらに、大興奮のお嬢さんであった。

ファッションセンターいまむらで興奮する、無月院家のお嬢様…。

なかなか見られない光景だぞ。

「白い服も黒い服もあるね。あ、ほら。ピンクの服もあるよ」

…そこ、珍しがるポイントなのか?

そりゃ色んな色の服があるだろ。

学校の制服と違って、これと決められてる訳じゃないんだから。

「さぁ、好きな服選んでこいよ」

俺は、そのへんぶらぶらしてるから。

あとはお嬢さんが好きな服を、好きなだけ選んでくれ。

しかし。

「え。悠理君、一緒に選んでくれないの?」

え。何で俺が?

「別に…俺は必要ないだろ?俺、女モノの服のことなんて分からないし…」

「…そうなんだ…」

「…」

さっきまであんなに大興奮だったのに、俺が傍を離れると言った途端、テンションが急降下。

…なんか、俺が悪いことしたみたいじゃないか。

「一人じゃ、どれを選んだら良いのか分かんない…」

ポツリと小さな声で、お嬢さんはそう呟いた。

はい、はいはいはい。分かりましたよ。

俺が悪うございました。

「分かった。一緒に探す。一緒に選ぶよ。それなら良いだろ?」

「…!…うん」

お嬢さんの顔に、ようやく笑顔が戻った。

何が嬉しくて、女モノの服を物色しなきゃならんのだ。

でも、仕方ないだろ。

お嬢さんに、こんな顔させる訳にはいかないし。

付き合うよ。付き合えば良いんだろ?

「言っとくけど、俺のセンスに期待するなよ」

後になって、「やっぱり悠理君の選んだ服はダサい」とか言い出すなよ。

女モノの服のことなんて、俺にはさっぱり分からないんだから。

女兄弟もいないしな。

「大丈夫、大丈夫。悠理君はセンス良いから大丈夫だよ」

何処から来てるんだ?その自信は。

「それで悠理君、私はどの服を選べば良いの?」

…どの服、って?

それは俺が知りたいんだけど?