アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「ケーキ。悠理君、誕生日ケーキはもう作ったの?」

「え?いや…作らないよ。普通に、ケーキ屋で買うつもりだけど」

寿々花さんの誕生日のときに、嫌と言うほど思い知ったからな。

素人が、安易な気持ちでケーキ作りにチャレンジするものじゃないと。

あれはハードル高いよ。やっぱり。

ましてや俺は、寿々花さんほどケーキにこだわりないからな。

家で作らなくても、店で買ってこようと思っていた。

ついでに、俺はホールケーキじゃなくて良いから。

ショートケーキの一つや二つ、あれば良いやって思ってたから。

ケーキ屋で普通に売ってるカットケーキを、買ってくるつもりだった。

午前中に買いに行こうと思ってたんだが…。何だかんだバタバタして、買い物に行けなかったからな。

この後、ケーキ屋に行ってこよう。

「寿々花さん、どのケーキが良い?カットケーキで済ませる予定なんだけど」

「かっと…?丸いおっきいケーキじゃないの?」

ホールケーキのことか?

「あぁ。俺はそこまでケーキにこだわりないから。カットケーキで良いと思ったんだけど…」

何ならケーキ屋じゃなくても、コンビニスイーツでも良いぞ。

そもそも、ケーキならこの間、母さんが持ってきてくれたチーズケーキを食べたしな。

「あ、それとも…寿々花さんはホールケーキの方が良かったか?」

一緒に大きいケーキ食べたかったのに、って?

それなら、ホールケーキを買ってくるよ。

例によってまた予約してないから、種類は選べないかもしれないけど…。

俺はどのケーキでも良いし。寿々花さんの好みに合わせるよ。

すると、寿々花さんは。

「お誕生日なんだから、おっきいケーキじゃなきゃ駄目だよ」

「そ、そうか…?なら、ホールケーキを売ってる店を探して…」

「よし。それじゃあ悠理君、ケーキのことは私に任せて」

…えっ。

沈んでいた寿々花さんの顔が、ようやく希望に変わったのは良いことなんだけど。

今度は何を企んでるんだ?

「悠理君の誕生日ケーキ、私が用意する」

「えっ…。ま、まさか寿々花さんが作るんじゃないよな…?」

俺でさえ、デコレーションケーキなんて難しかったのに。

鶏肉とシカ肉の区別もつかない、料理ど素人の寿々花さんには、とてもじゃないが…。

…と、思ったが。

「私が作ってあげたいけど…。また失敗したら困るから、別の人に頼む」

「そ、そうか…」

それならまぁ…任せても良いかな。

…本当に大丈夫だろうか?

「良いのか?本当に…。大丈夫か?無理しなくて良いんだぞ」

「うん、大丈夫。悠理君、今度こそ期待して待ってて。ちょっと出掛けてくるね」

「わ…分かった…」

寿々花さんは意気揚々と、意気込んで家から出ていった。

…期待って言われても…不安の方が大きいんだが。

ま、まぁ…食べられるものなら、何でも良いや…。