アンハッピー・ウエディング〜前編〜

…寿々花さんが、庭に出ていってしまったので。

仕方なく、俺は一人でみりん風味のカレーを食べた。

で、10分後。

「…暑かった…」

「あ、お帰り…」

寿々花お嬢さんが、家の中に戻ってきた。

意外と早かったな。

やっぱり外、暑かったのか。無理もない。炎天下だからな。

「頭を冷やしたかったのに…むしろ暑くなっちゃった…」

「ま、まぁ…。そんな落ち込まなくても良いだろ?」

とは言ったけど、やはりずーん、と沈んでいる寿々花さんである。

本当に、気にしなくても良いんだけどなぁ。

頭のコブ、だいぶ痛みが引いてきたし。

それに…。

「さっきの寿々花さんの謎酢豚、良い感じにカレーにリメイクして、そこそこ美味しくなってるよ」

まるっきり無駄ではなかったのだと思えば、まだ何とか…救いはあるだろ?

「本当…?」

「あぁ。食べてみろって。…糠漬けのきゅうりとも合うし」

カレーはらっきょうか福神漬けだろう、って?

同じ漬け物なんだから、糠漬けでもセーフ。

俺は寿々花さんの分も、カレーをよそってあげた。

「本当だ…。…美味しい」

な?言っただろ?

「良かった。たくさんあるからたくさん食べ…」

「悠理君は、何でも美味しく作れるのになぁ…。何で私は駄目なんだろ…」

「…」

駄目だ。寿々花さん、すっかり自分は駄目な子モードに入っちゃってる。

確かに、寿々花さんの料理の腕前は苦手…どころか、壊滅的、絶望的な領域に達しているが。

でも、人には向き不向きってものがあるし。

料理が出来なくても、他に良いところがいっぱいあるんだからさ。

そんなに気にしなくても良いと思うんだが。

「そんな落ち込まなくても…。誰にでも苦手なことくらいあるだろ?」

「例えば、悠理君は何が苦手なの?」

え、俺?

…俺の苦手なもの…。…生牡蠣?

って、そういう意味じゃないよな…。

「ほら。悠理君は苦手なことがないでしょ?」

「いや、そんなことは…。確かに、寿々花さんほど極端に苦手なものはない…かもしれないけど」

部分的に苦手なことはあるぞ。

ホラー映画とかな。

「悠理君のお誕生日…。もっとちゃんとお祝いしてあげたいのにな…」

「…」

可哀想になってきた。

マジで、その気持ちだけで充分嬉しいんだけどな…。

自分がそうしてもらったように、俺の誕生日も盛大に祝ってあげたいんだろうな。

今のところ、その気持ちが空回りしてるだけで…。

「…そんなの気にしなくて良いって。誕生日なんて、ケーキ食べて、誕生日おめでとうって言ってもらえるだけで充分だよ」

と、俺が言うと。

「…!誕生日ケーキ」

突然、寿々花さんがガバッ、と顔を上げた。

ど、どうした?ケーキに反応したぞ。