アンハッピー・ウエディング〜前編〜

土鍋の中身と、しばし睨めっこした後。

結局、みりんの海とケチャップといちごジャムは、もうどうにもならないから捨てた。

その代わり、ぶつ切りにされた食材だけは救出したよ。

調味料なら無駄にして良いって訳じゃないけど、もう混ざり合っちゃって、どうにもならないからさ。

それでも奇跡的に、「意外と美味しい…!?」なんてことがないかと思って、味見してみたけど。

やっぱりそんな奇跡は起きそうになかったから、もう捨てた。

心が痛む。ごめんな。

その代わり、他の食材は…野菜と肉は救ったから。それで許してくれ。

で、この食材をどうリメイクしたものか。

…出来ることと言ったら限られるよな。必然的に。

食材をよくよく水で洗って、皮を剝いて、切り方を揃え。

生煮えの食材達を、別の鍋に水と一緒に入れ。

カレー粉をぶち込んで、カレーにした。

使ってた食材的にも、丁度良いかなって。

…まぁ、長ネギ入ってるけど。

カレーに長ネギは…あんまり一般的ではない気がする。…

でも、ほら。玉ねぎの代わりだと思えば、そんなに悪くない。

何より、カレー粉の強い味と香りが、多少の食材のクセは抑えてくれる。

いやはや。カレーは偉大だ。

これで、何とか昼飯には間に合ったかな。

「よし。寿々花さん、カレー出来たから一緒に…。…あれ?」

一緒に食べよう、と誘おうと思ったのに。

いつの間にか、寿々花さんの姿が見えない。

…何処行ったんだ?

まさか…。

俺はキッチンを出て、玄関に向かった。

すると、そこに。

「…あ、やっぱりいた…」

「…」

またしても、玄関先で蹲って、ずーんと落ち込んでいた。

…しかしあんた、何故いちいち玄関で落ち込むんだ?

こんなところで落ち込むな…って言うか、別に落ち込むようなことは何もないだろ。

「ほら、そんなところで落ち込んでないで。さっきの寿々花さんの酢豚、カレーにリメイクしたからさ。食べよう」

ちょっとみりん臭いかもしれないけど、充分許容範囲だと思うぞ。

「ほら。座ってないで。何をそんなに落ち込むことがあるんだよ」

「…悠理君のお誕生日なのに…。悠理君に働かせちゃった…」

あー…。はいはい。それな。

別に、そんなこと気にしなくて良いのに。

…いや、バケツを引っくり返したことは気にして欲しいかな。

危うく寿々花さんまで怪我するところだったからさ。

「お皿洗いとお洗濯までは上手く行ったけど…。お掃除とお料理が出来なかった…」

「そ、そうか…」

皿洗いもギリギリアウト…洗濯は論外だったけどな。

まさか、金だらいと洗濯板で洗うとは思わなかったよ。

聖青薔薇学園女子部の家庭科の先生は、今すぐ生徒達に、洗濯機の使い方を授業で教えるべきだな。