アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「悠理君が…?悠理君は駄目だよ。お誕生日なんだから、何もしちゃ駄目なんだよ」

そうは言うけどさ。

これ以上寿々花さんに作らせたら、酢豚どころか。

とてもじゃないけど、食べられないものが出来上がりそうで。

それどころか、またしても異臭騒ぎが起きかねない。

あんまり異臭ばっかりさせてたら、近所の人に「お前ん家くせーから、出て行ってくれ」って署名を集められそう。

そうなる前に、まだ取り返しのつくうちに止めなくては。

俺は、ちらりと土鍋の中を見下ろした。

薄い黄色の生温いみりんの海に、ぶつ切りの食材がぷかぷかと泳ぎ。

その上に、大量のケチャップといちごジャムの塊が、赤い島のように浮かんでいる。

…いや、もう手遅れのような気もするけど。

一応、まだ異臭はしてないから。セーフ。

「俺だって寿々花さんに任せてあげたいんだけど…。でも、食材を無駄にするのを、黙って見てられないからな」

勿体ないから。いくらお金持ちだからって、食材を無駄にして良い訳じゃないから。

俺自身が貧乏性なせいもあって、食べ物を無駄にするっていうのはどうも…。

「あとは俺がやるから。向こうで待っててくれ」

「…」

寿々花さんはしばし躊躇い、何か言いたそうに口を開きかけたが…。

「…うん」

…結局は何も言わず、こくりと頷いて大人しくキッチンから出ていった。

…さてと。

それじゃあ、何とかして…この土鍋の中身を救うとしようか。

何とかなるんだろうか?これ…。