アンハッピー・ウエディング〜前編〜

と、このような経緯を経て。

本日の俺とお嬢さんは、お嬢さんの服を買う為に一緒に出掛けることになった。

「ったく、何で俺がこんなことを…」

思わず愚痴りたくもなるってもんだろう。

しかし。

「え?だって、悠理君がパジャマじゃ駄目だって言うから」

俺のせいだった。はい。

そうか…全ては自分の撒いた種だったということが…。

それなら…文句言っても仕方ないな…。

…いや、どう考えても普段着を持ってないお嬢さんが悪いだろ。

俺は悪くない。

「それで、どの店で買うんだ?」

早いところ買い物を済ませて、出来るだけ早めに帰りたい。

…と、思ったのだが。

「え?」

お嬢さんは、きょとんと首を傾げてこちらを向いた。

…何?その疑問符だらけの顔は…。

「服って、何処で買えば良いの?」

むしろ、俺画がそう質問されてしまった。

…改めて冷静にそう聞かれると、返答に窮するな。

それは…普通に、ショッピングセンターとか行って…買えば良いんじゃないの?

いや、でもお嬢さんほどの金持ちになると。

ショッピングセンターじゃなくて、何処ぞのブランドのブティック…とかで買うべきなの?

俺、女性モノのブランドの服なんて知らないけど…。

知らないどころか、目の前の人間が着ている服がブランドモノなのか、ショッピングセンターでレジにて20%割引の安物なのか、その区別すらつかない。

見る目ないからな。俺。

男モノだって分からないのに、女モノの服なんて余計分からない。

そういうことは…男に聞くもんじゃないだろ。

しかし、俺の隣にいるお嬢さんは、俺以上に何も分かっていないらしく。

「コンビニ?コンビニに売ってる?」

なんて言ってるし。

最近のコンビニは、大抵のものは揃ってるけど。

さすがに、ブティックじゃないからな。

お嬢さんが普段着に着るような服は、売ってないと思うぞ。

「コンビニはないだろ…さすがに」

「じゃあ、何処にあるの?今着てる、この悠理君の服は何処で買ったの?」

それ?

それは…あれだよ。

「ファッションセンターいまむらだよ」

「おぉ、強そう。悠理君が買い物に行くくらいなんだから、きっと凄く有名なお店なんだろうね」

まぁ、有名っちゃ有名だな。

庶民の味方だよ。

女モノ男モノ、どちらでも色んな種類の服が揃ってるし。

何より、値段がお手頃。

服だけじゃなくて、布団やベッドシーツや、靴や鞄なんかの小物も売ってるしな。

万能だよ、あの店は。

俺は昔から、よく利用していたが…。お嬢さんはどうなんだろう。

確かに便利なお店だけど、無月院のお嬢様の服を買いに行く…ところじゃないかもしれない。

「何この服。安っぽい」とか言われたらどうしよう。

いまむらに対する冒涜だぞ。

「いや…。あんたは仮にもお嬢様なのであって、もう少しマシな店に…」

マシな、って何だよ。いまむらブランドを馬鹿にするつもりか?

そうじゃなくて。金持ちは金持ちに相応しい格好をするべきなんじゃないかって…。

「よし、じゃあそのお店に行こっかー」

「…」

お嬢さんがやけに乗り気なので、俺は何も言えなかった。