アンハッピー・ウエディング〜前編〜

…一時間後。

ようやく、ずぶ濡れの廊下と階段が元通りになった。

俺自身水を被ってずぶ濡れだったから、まず自分が着替えて。濡れた服を洗濯して。

それから乾いたタオルをありったけ持ってきて、濡れた階段を一段ずつ乾拭き。

廊下も隅々まで全部拭いて、飛び散った水滴を残さず拭き取った。

これで、足を滑らせることはないだろう。

はぁ、やれやれ。

一仕事終えた俺は、手を洗ってキッチンに向かった。

氷のうに氷を入れて、まだズキズキと痛む頭頂部に氷のうを当てた。

掃除してる間も、ずっと痛かったんだぞ。

コブ出来てんじゃねぇの?

頭のてっぺんだから、湿布も貼れないし。

脳天に氷のうを当てて涙目とは…。だっせー…俺。

「…ん?」

ふと、俺はリビングを見渡した。

…寿々花さんがいないぞ。何処に行った?

頭に氷のうを乗っけたまま、俺は家の中を歩いて寿々花さんを探した。

すると。

「うわっ…。びっくりした」

「…」

…そうなんじゃないかなぁと思ってきてみたら、案の定。

寿々花さんは玄関先に蹲って、ずーんと沈んでいた。

…あんたは、いちいち玄関で落ち込まなきゃ気が済まないのか?

自分の部屋で落ち込んでくれよ。

「おい。…おい、大丈夫か」

「…」

「今日は何に落ち込んでるんだよ?」

「…悠理君のお誕生日なのに…。ちゃんとお祝いしてあげられなかった…」

「…」

そんなことかよ。

そんなことくらいで落ち込むな…と言いたいところだったが。

寿々花さんにとっては、落ち込むほど大切なことなんだろうな。

「今日はお殿様なのに…お殿様に働かせちゃった…」

「い、良いって…。大体、殿様だって働くだろ?偉そうにふんぞり返ってるだけが仕事じゃねーって」

殿様にだって、殿様の仕事があるだろ?…天下統一とか。

「それに、まだ誕生日は終わってないからな。今日一日ずっと誕生日なんだから。別にこれくらい…」

「…!そうか。まだ誕生日は終わってないんだよね」

寿々花さんは、ハッとして顔を上げた。

…お?

「悠理君、私これから挽回するよ」

「そ、そうか?別に…無理しなくて良いけど…」

「そうだ。もうすぐお昼だし…今日のお昼ご飯は、私が作ってあげるね」

「…」

…なんか、また地雷臭が漂い始めたんだけど。

これ、止めちゃいけない流れだよな…?