宴も無事に終わり。

「ふみゅー…」

寿々花さん、そろそろお眠の時間になってきたな。

寝るの早いからな、この人。早寝遅起きが基本だから。

「よし、そろそろ帰るかー」

「後片付けとか、手伝った方が良いんじゃないですか?」

「いや、良いよ。自分でやるから」

花火提供してもらったから、そのお礼だよ。

それに、寿々花さん眠そうだからさ。

早いところ解散にした方が良いだろ。

「ほら、寿々花さん。雛堂と乙無が帰るってさ」

「ふにゃ…。うん、また遊びに来てねー」

眠そうな目を擦りながら、手を振ってご挨拶。

また遊びに来ても良いってさ。良かったな。

「おう、また星見の兄さんを冷やかしに来るわ」

来んなよ。

「僕は忙しいんですからね。冷やかすなら一人で行ってくださいね」

「まぁまぁそう言うなよ。邪神の眷属だって夏休みだって」

「邪神の眷属に夏休みはありません」

…はいはい。

俺は雛堂と乙無を、そのまま玄関まで見送った。

…ふぅ、やれやれ。静かになったな。

「寿々花さん、寝る前にシャワー浴びろよ」

「うーん…。うん…」

既に半分寝惚けてるんだが、大丈夫か?

「今日、楽しかったか?」

俺は、徐ろに寿々花さんに尋ねた。

この質問をすると、さっきまで眠そうにしていた寿々花さんが、ハッとしてこちらを向いた。

「…うん、楽しかったよ」

本当に楽しそうに、嬉しそうに頷いた。

そうか。

「本当の花火大会より、もっと楽しかった」

…それは言い過ぎじゃないか?

でも、そう思ってもらったなら良かった。

「来年もやろうね、おうちで花火大会」

「その前に、家じゃなくて…普通に街でやってる花火大会に参加するのが先じゃないか?」

「あっ、そうか…。でも悠理君のりんご飴美味しかったから、やっぱり家でもやりたい」

そうか。

じゃあ、来年もまた雛堂と乙無に声を掛けてみるかな。

そして俺は、来年までにりんご飴の作り方をマスターしておくよ。