アンハッピー・ウエディング〜前編〜

…さて、そんな雑談をしているうちに。

段々と、日が暮れてきた。

「よし、それじゃあそろそろ始めるか」

「こうなったら、心行くまで思いっきり楽しんでやる。星見の兄さん!準備だ!」

「あんたも手伝えよ…」

お客様かよ。お客様だけど。

まぁ雛堂は、今回家庭用花火を持ってきてくれたからな。

一応、お客様待遇ってことで。

「寿々花さん、そろそろ始めるぞ」

「わーい。やったー」

わくわく、と庭に出る寿々花さん。

「ほい、これ今回持ってきた花火な」

雛堂が、紙袋いっぱいの手持ち花火をドサッ、と庭に置いた。

…どんだけ持ってきてんだよ。

ホームセンターに売って家庭用花火、全部買い占めてきたんじゃないだろうな?

「じゃ、早速やるかー。まず定番のススキ花火な!」

雛堂は率先して花火を取り出し、ライターで火をつけた。

いよいよ、おうち花火大会の開幕である。

「わー。シューって言ってる。シューって」

「綺麗だろ?無月院の姉さんもやってみるか?」

「うん、やるー」

寿々花さん、大喜びでススキ花火に着火。

「危ないからな。ちゃんとバケツの上で…自分に向けるんじゃないぞ」

「うん、分かったー」

「悠理さん、さながら保護者ですね」

だろ?

いつもこうなんだよ。

「こっちはスパーク花火。こっちもやってみるか?」

「すぱーく?」

「ほら、こうやってさ。パチパチって火花が散るみたいな花火なんだよ」

「わーい。楽しそう」

大喜びで、片手にススキ花火、片手にスパーク花火を持つ寿々花さんである。

これぞ両手に花(火)。なんてな。

つまんないこと考えんのやめよう。

「悠理君見て。花火だよ、ほら。パチパチって」

「ちょ、おい。分かった分かった。分かったからこっちに向けるなって」

煙が。煙がこっちに向かって飛んでくるだろうが。

「面白いね。綺麗だねー、これ」

「良かったな」

「うん!…こっちの花火は?」

「香り付きのスパーク花火だってよ。やってみる?」

香り付き?そんなのあるの?

…何の匂いなんだろう?

「うん、やるー」

「はいよ」

「…おぉー。なんか薬っぽい匂いがする」

…メロンの匂い、って書いてあるぞ。パッケージには。

でも、言われなきゃ全然それと分からないな。

最近の花火って凄いな。俺が小さい頃なんて、家庭用花火と言えば、ススキ花火と線香花火くらいしかなかったような気がするけど。

記憶にないだけで、俺が小さい頃もこんなに種類豊富だったんだろうか?

「ほれ、乙無の兄さんもやってみろよ」

「いえ、僕は遠慮しておきます」

と、乙無は雛堂の差し出した花火を断った。

何だよ。

「あんた、花火嫌いだっけ?」

「いいえ、嫌いな訳ではなく…。こうして小さな火を見ていると、『昔』の記憶が蘇るんです。かつて僕が、まだ人間だったときのことを…」

…またなんか言い出してるぞ。乙無が。