アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「…友達?友達なのか?星見の兄さん、いつの間に無月院家のお嬢様と友達になってんの…!?」

…えーっと。

どう説明したら良いものか…。

「しかも、下の名前君付けで呼ばれてなかった?自分でさえ、まだ星見の兄さん呼びなのに…!?」

「…それはあんただけだろ」

雛堂以外に呼ばれたことねーよ。星見の兄さんなんて。

いつの間にか定着してるよな。そのあだ名。

「ここ、星見の兄さん家じゃねーのかよ?何で無月院のお嬢様がいるんだよ?分かるように説明してもらおうか」

説明…。どう説明したもんかな。

と、思っていると。

「確か悠理さん、許嫁の方と一緒に暮らしてるって仰ってましたよね?許嫁って、もしかして先程の…」

俺の代わりに、事情を察した乙無がそう言った。

あんた鋭いな。さすか邪神の眷属。

「あぁ。ご明察だ」

「ほげぇ!?マジで?許嫁って無月院家のお嬢様だったのかよっ!?」

そうだよ。

悪かったな、黙ってて。

出来れば、一生隠しておきたかったんだけど…仕方ないよな。

「羨ましっ…!あんな超絶美人お嬢様と、一つ屋根の下同居だと…!?一緒にホラー映画観たり、仲良くハムスターランド行ったりしてたんだな!?」

「そ、そうだけど…。別に羨ましいことじゃないぞ」

「黙らっしゃい!自分にとっては充分羨ましいわ!」

隣の芝は…って奴なのかもしれない。

雛堂が何をそんなに怒ってるのか、俺にはさっぱり分からないが。

「ずっと、お声掛けするのも畏れ多い高嶺の花だと思ってたけど…。こうなったら、今日を機にお近付きになってやる!」

…なんか言ってるぞ。

寿々花さんとお近付きになって、それでどうするんだよ。

すると、乙無が。

「大也さんは羨ましいって言いますけど、それはあなたに選択の自由があるからでしょう?悠理さんは本人の意志に関係なく、先程のお嬢様と同居を余儀なくされている訳で。実際は苦労の方が多いと思いますけど」

俺の心の内を察したかのように、そう言った。

乙無…あんた良い奴だな。中二病でさえなければ…。

「美人は三日で飽きる、って言いますしね。そこのところ、どうなんですか?悠理さん」

「え?いや、別に…」

「美人は三日で飽きるだと?それは美人と三日も付き合える贅沢者の台詞だ。本当の非モテ男は、三日どころか三分たりとも美人と同居なんて出来ねぇんだよ!」

「…あ、そう…」

なんか雛堂が切実で、哀れになってきた。

そんなこと俺に言われても…。

まぁ確かに、苦労することも多いけども。

「苦労ばっかり、悪いことばっかりじゃないぞ。意外と」

「そうなんですか?…悠理さんがそれで良いなら、良いと思いますけど」

この春にこの家に来てから、寿々花さんにはひたすら、振り回されるばっかりだけど。

意外と、想像していたよりは悪くない。

そう思えるのは寿々花さんのお陰か、それとも俺の気持ちの変化なのか…。定かではないがな。