アンハッピー・ウエディング〜前編〜

…何の用だよ、こいつ。

元はと言えばあんたの責任だぞ。この雨男め。

「何だよ。俺は今忙しいんだよ」

『ちょ、何で機嫌悪いの?』

あんたのせいで花火大会、中止になったようなもんだからな。

え?逆恨み?

知るか。

何かのせいにしないと気が済まないことって、あるだろ?

「良いから、用件を言えって」

『そうそう。昨日の花火大会さぁ、中止になったじゃん?』

やはり花火大会の話題か。

『昨日すげー雨だったのに、今日めっちゃ天気良いじゃん。なぁ?腹立つよなー。無能天気予報がよ』

「…愚痴の為に電話してきたのか?」

そうだとしたら、すぐに切るぞ。

そんな愚痴聞いてる暇ないからな。今。

『いいや?代わりにと言っては何だけど、腹いせに近くのホムセンで、家庭用花火を爆買いしたんだわ』

…家庭用花火?

って、あれか。打ち上げ花火じゃなくて。

線香花火とかロケット花火とか。家の庭で、バケツ出して出してやる奴。

懐かしっ…。小学校低学年くらいまで、毎年やってたような気がする。

『あれ、一緒にやろうぜって星見の兄さんを誘おうと思ったんだよ』

とのこと。

自分の雨男のせいで花火大会が中止になったから、家庭用花火で妥協する訳だな?

でも…良い考えかもしれない。

と言うか、俺と同じ考えじゃないか。

「…俺も丁度今、妥協案として家で屋台飯作ろうと思ってたところなんだよ」

『おっ、マジ?』

本物の屋台の代わりに、家で作る屋台飯。

打ち上げ花火の代わりに、家庭用花火。

寿々花さんが行きたがっていた、本物の花火大会とは全く別物だけど。

代替案としては…これ以上ない試みである。

果たして、これで寿々花さんが機嫌を直してくれるものだろうか。

『じゃあ、星見の兄さん家に行って良い?花火持ってくから』

「あぁ、分かった。…住所、知ってるっけ?」

『知らね。後でメールしてくれ』

分かった。

そういや、ここに引っ越してから他の人に住所教えるの初めてだな。

「乙無は?あいつは来るのか」

『うん。待ち合わせ時間知らせておくから。多分来るだろ』

また、一方的に待ち合わせ場所と時間だけ伝えるつもりか。

果たして、それで本当に乙無は来るのだろうか。

自称邪神の眷属は、毎日忙しいってことだったからな。

…まぁ良いや。一応来るものとして、準備だけはしておこう。

『そんじゃ、また後でな!』

「あぁ。準備しておく」

今度は雨降らすなよ、雛堂。

まぁ家庭用の花火くらいなら、多少雨が降ってても出来るだろうけど。

そうと決まれば、急いで帰って、急いで支度しなければ。