アンハッピー・ウエディング〜前編〜

普通のりんごなら売ってるんだけどな。

りんご飴となると…。何処に売ってるんだろう?

「…うーん…」

俺は、青果コーナーでナマのりんごを見つめた。

…りんご飴ってさ。自分で作れないのかな?

ちょっとした思いつきなんだが。

りんごを串に刺して、水飴を作って、その水飴をりんごにくっつけたら。

それで、りんご飴っぽいものが出来ないか?

完全に想像で物を言ってる。

そうだ、りんご飴だけじゃなくてさ。

寿々花さんが食べたいって言ってたもの、家で作れないかな?

えぇと、何食べたいって言ってたっけ…。りんご飴と焼きそばと、綿あめと…。

ベビーカステラと、かき氷だっけ?

焼きそばは問題ない。頭の中にレシピが入ってる。

りんご飴は作り方を調べるとして、綿あめは…市販のもので許してくれ。

りんご飴はなくても、綿あめなら駄菓子コーナーに売ってるからな。

問題は、ベビーカステラとかき氷だな…。

ベビーカステラは、いつだったか雛堂達と一緒に行った食べ歩きで買ってきたことあったよな。

商店街に、売ってる店があったはず。

で…かき氷をどうするか。

…こればかりは、かき氷機を使わないことにはどうしようもないな。

仕方ない。近くのホームセンターで買ってこよう。

あれ?意外と何とかなるのでは。

分かってるよ、俺だって。寿々花さんが望んでるのはそういうことじゃないって。

花火大会の屋台で食べる焼きそばと、自宅のホットプレートで作った焼きそばじゃ、まるっきり違うものだもんな。

屋台で食べる食べ物って、どれもこれもチープな味なんだけどさ。

それがいかにもお祭りっぽくて、乙な味がするって言うか…。

寿々花さんは何も、りんご飴が食べたかったんじゃなく。

花火大会に行って、そこの屋台で買ったりんご飴が食べたかったんだよな。

それは分かるんだけどさ。

残念ながら、それは出来そうにないから。

代わりにはならないにしても、せめて家でお祭り気分を味わって欲しい。

という、俺の親心だな。

何より、また落ち込んで、玄関で蹲って欲しくない。

その為に、一肌脱ごうと思った。

更に、その後。

俺のもとに、思いもよらぬ提案をしてくる者がいた。




スーパーで屋台グルメの材料を購入し。

それから商店街に寄って、例のお店にベビーカステラを買う為に並んでいた、その時。

突然、俺のスマホに着信音が鳴った。

うわっ、びっくりした。

「はい?もしもし?」

『やっほー、星見の兄さん。元気してるー?』

電話の相手は、雛堂であった。