アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「悠理君がお友達と行くなら、私はおうちで待ってるよ」

そういうところで遠慮するんだもんなぁ。

もっと我儘になって良いと思うけど。

「確かに誘われたけど、約束した訳じゃないから。寿々花さんが行きたいなら、寿々花さんと一緒に行くよ」

「…!でも、悠理君のお友達…」

「良いんだよ。あいつは別の友達も誘ってるから。そいつと行くだろ」

乙無のことである。

しかし乙無、明日ちゃんと来るのかな?

まぁ、もし乙無が来なかったら、雛堂には一人で花火大会を回ってもらうってことで。

「…本当に?一緒に行ってくれる?」

「あぁ。良いよ」

「…!」

寿々花さんの顔が、まるで魔法がかかったみたいに明るい表情に変わった。

わっかりやすい奴。

「あのね、あのね。花火大会でね、きっといっぱい屋台が出てるから、見て回りたいの」

「はいはい」

出てるだろうな。屋台。花火大会の定番。

「えっと、りんご飴とね、焼きそばとね、かき氷とね。それからそれから、綿あめとりんご飴食べたいんだ。あっ、りんご飴はさっき言ったっけ」

行きたい屋台を、指折りしながら並べ立てる寿々花さん。

「それとベビーカステラを食べてね、りんご飴食べる」

どんだけりんご飴食べたいんだ。

つーか、甘いものばっか。焼きそば以外全部甘いものじゃん。

「はいはい。分かったよ」

「広い高いところでね、おっきい花火見て。それで『たまやーかぎやー』って言うんだ」

「…それは恥ずかしくね?」

漫画とかだと定番だけど、実際に言ってる奴は見たことない。

ましてや、高校生にもなって。

「あとね、金魚すくいしてね、りんご飴食べて。あ、これはさっき言ったっけ。それでくじ引きして、ヨーヨー釣りして、それからそれから」

「分かった、分かって。分かったからちょっと落ち着け」

興奮するな。楽しみのは分かるけど。

「順番な。人も多いだろうし、ゆっくり順番に、一個ずつ回ろう。な?」

「うん、分かったー」

全く、相変わらず子供みたいな人だよ。

人混みではぐれないように、気を遣っておかないとな。

またハムスターランドのときみたいに、延々と走り回って探すのは御免だぞ。

携帯持ってないからな。この人…。いざとなったときに連絡が取れないんだわ。

花火大会ともなれば、もしかしたらハムスターランドより人口密度高いかもしれないし。

はぐれたときの為に、待ち合わせ場所とか決めておくべきかもな。

「楽しみだね、悠理君」

「はいはい。そうだな」

園児を引率して遠足に連れていく、幼稚園の先生になった気分である。

まぁ、寿々花さんが大層楽しみにしてるみたいだから、幼稚園の先生でも何でも喜んで引き受けよう…と。



…思っていたのだが。