アンハッピー・ウエディング〜前編〜

朝食が出来上がる頃に、寿々花さんが眠い目を擦りながら起きてきた。

「悠理君。おはよ〜…」

「おぉ、おはよう。丁度朝飯出来たところだよ」

「お休みの日なのに、悠理君は早起きだね〜」

どっかの誰かさんに、朝っぱらから電話で叩き起こされたからな。

俺だって、弁当作る必要もないのに、こんな朝早くから起きたくないよ。

「昨日ね、面白い夢を見たんだー」

と、寿々花さんが話し出した。

「それは良かったな。どんな夢だったんだ?」

「うんとね、きのこが好きなお友達に、変な怪しい薬を飲まされて、子供にされちゃう人の夢」

「…」

…それ、面白い夢か?

悪夢じゃね?

この人、本当よく面白い夢を見るよなぁ…。羨ましい。

俺なんて昨日、深海でタカアシガニに追い掛け回される夢を見たぞ。

悪夢じゃん。

「面白かったー。今日、夢の続き見られないかなぁ」

「…俺は、二度と昨日の夢の続きは見たくないけどな…」

今度こそ捕まりそうだわ。タカアシガニに。

案の定、夢に出てきやがった。深海魚なんて見るもんじゃないな。

…って、そんなことより。

危うく忘れるところだった。今朝の雛堂の話。

「なぁ、寿々花さん」

「今度はゲームの夢とか見たいな。ゲームの登場人物と友達になる夢。あとお人形の夢」

「夢の話は良いから、俺の話を聞いてくれ」

「…ほぇ?」

ほぇ、じゃなくてさ。

「今朝友達に誘われてさ。この辺、明日花火大会なんだってな」

「…花火?」

きょとん、と首を傾げる寿々花お嬢さん。

やっぱり知らなかったのか。花火大会のこと。

「あぁ。毎年この時期にやってんだって。そこそこ規模が大きいって」

「花火、花火…。そういえば、去年もパンパン音がしてた日があったな…」

「去年は行かなかったのか?花火大会」

「うん」

こくり、と頷く。

そうか…。まぁ、一緒に行く人が…。

あんまり、一人で行くような場所じゃないしな。

「今年はどうする?…行ってみるか?」

「…」

寿々花さんは珍しく、無言で答えた。

…どうした?

「…興味ないか?」

それとも、人混みに出るのが嫌か。

暑苦しいもんな。花火大会に限らず、夏祭りって大概そう。

それが良いんじゃないかと言われたら、そうなのかもしれないけど。

ただでさえ暑い夏の夜なのに、大勢の人が集まってたら余計暑苦しいに決まっている。

しかし、寿々花さんが気にしているのはそういうことではなかった。

「悠理君が一緒にいてくれるなら、行ってみたいけど…」

「…けど?」

「でも、悠理君はお友達に誘われたんでしょ?」

…あー。成程。そういうことね。