アンハッピー・ウエディング〜前編〜

甲殻類エリアの後は。

「こちらがヨロイザメですね。大きな目と、鋭い歯が特徴です」

「深海で青っぽく光るそうです。幻想的ですね」

「こちらがラブカです。この特徴的なエラ…。何度見ても、勝負を挑みたくなりますね」

「飼育が難しいので、こうして水族館で飼育されている例は稀だそうです。貴重な生き物なので、よく見ておきましょう」

「次はアトラクラゲです。さながらUFOのようで格好良いですね」

「赤く発光するのは、威嚇行動だそうです。このクラゲに限らず、深海では発光する生き物が多いですね」

「そして、こちらがグソクムシです。見ての通り、深海のダンゴムシのようですね」

「雑食で、何でも食べるので、深海の掃除屋と呼ばれているそうです」

久露花さんと橙乃さんは、次々に展示されている深海魚達を紹介してくれた。

その人達がいたら、もう水族館の案内スタッフ要らないな。

めちゃくちゃ詳しいじゃん。深海魚に。

そして、そんな二人が水槽の前で説明してくれる度に。

「…ほぇー…」

寿々花さん、興味津々。

結構見た目、グロテスクな生き物が多いんだけど…。

このお嬢様、全然臆することなくガン見している。

肝据わってるよ、あんたは。

「…物怖じしない性格なんだね、彼女…」

思わず、車椅子の青年が俺に向かって、ポツリとそう呟いた。

「…そうだな…」

ホラー映画でゾンビが出てきても、「ほぇー」の一言で済ませるような奴だからな。

グロテスクな深海の生き物を見ても、やっぱり「ほぇー」で済ませている。

でも、俺は寿々花さんほど鈍感じゃないからさ。

どの生き物を見ても、「うぉっ」ってなってる。さっきから。

グソクムシだってよ。ダンゴムシの化け物だぜ、こんなの。

怖っ…。こんな生き物に襲われたらひとたまりもないだろう。

よっぽどのことがない限り、襲われはしないと思うけど…。

深海ってのは、こんな化け物みたいな生き物しかいないのか?

もっと神秘的で、荘厳な…。神聖な姿をした生き物がいないものか。

すると。

「それで、こちらが…クリオネですね」

おっ、噂をすれば。

クリオネは知ってるぞ。有名だもんな。

さながら、深海に住む透明な天使なんだろ?

そうそう、こういう神秘的な生き物を見たかったんだよ。俺の癒やし、

「…ですが、クリオネはつまらないので、次に行きましょうか」

自称アンドロイド、クリオネに興味なし。

特に解説もなく、さっさと次の水槽に歩いていってしまった。

おい。何故興味を失うんだ。

グロテスクじゃない生き物には興味なし、ってか?

俺の癒やし…。折角見つけた俺の癒やしが…。

「次にスケールワームですね。海底火山付近の深海に住む生き物でして…」

「是非戦いを挑んでみたい、特徴的な顔ですね」

「ほぇー」

久露花さんと橙乃さんが説明して。

寿々花さんは興味津々で、水槽にへばりついている。

その水槽の中には、さながらエイリアンみたいな生き物が展示されている。

…もうやだ、この女性陣。