アンハッピー・ウエディング〜前編〜

ノコギリエイとノコギリザメを見た後は。

「こちらは甲殻類エリアになります」

順路を進んで、甲殻類エリアに入ってきた。

甲殻類…。カニとかエビだよな?

これまた、一層美味しそうなエリアに来てしまった。

カニなんて、お高くて滅多に食べたことないけど。

俺が気軽に手を出せるのは、精々カニカマくらいだな。

良いじゃん、カニカマで。安いし美味いし。カニっぽいし。

って、食べる為に見に来たんじゃないっての。

「手始めに、こちらにいるのはヒラアシクモガニですね」

「…うぉっ…」

「わー。足ながーい」

思わず、水槽の前でびくっと足を止めてしまった。

…ノコギリエイも大概だったけど、このカニもなかなかインパクトのある見た目だ。

足がひょろっと長くて、名前の通り、カニよりクモっぽい。

きっしょ…。…あ、カニ好きな人ごめん…。

「そしてこちらが、タカアシガニです」

「うぉっ…」

「わー。カニの王様みたいだー」

これまた、凄まじいインパクト。

夜中に見たら腰抜かすレベル。

なんか…どっかのゲームでこんなモンスターいなかった?

怖いって言うか…。…きっしょ…。

あ、カニ好きな人ごめん…。

「これって美味しいの?」

「意外と美味だそうですよ。大きいから、食べるところも多いですしね」

「ほぇー」

水槽にベタッと貼り付いて、カニをしげしげと眺める寿々花さん。

よく見れるな…。怖くないのか?

「俺はちょっと…。あんまり見たくないって言うか…」

車椅子の青年は、水槽の中を見ないように目を逸らしていた。

その気持ちはよく分かる。

夢に出てきそうなナリしてるもん。

これを食べさせられるくらいなら、俺は一生カニカマで良いね。

「悠理君、あれ美味しそうだね。ねっ」

「…そうだな…」

食べたいなら、カニカマ買って帰ってやるよ。

あれを見て、美味しそうと思える寿々花さんの肝の太さよ。

それとも、俺がビビりってことなのだろうか。そうなのか?

この水族館、深海に住んでる生き物を展示しているせいか、どのエリアも薄ぼんやりしてるって言うか…。暗いんだよな。

水槽の中も、暗闇の中に懐中電灯を照らしてるみたいで。

そのせいで、余計不気味に見えるんだよ。

もっと明るいところで見たら、これほど不気味には見えなかっただろうに。

恐るべし、深海魚達。