アンハッピー・ウエディング〜前編〜

いよいよ夏本番なだけあって、炎天下の外に出ると、暑さのあまり茹だってしまいそうだった。

が、今回は歩いていく必要はない。

学校の遠足とは違うからな。

いざとなったら、タクシーを使っても良いんだぞ。

最高だよな。

まぁ、今回はバスで行けそうだから、バスで行くけどさ。

マップアプリのナビに従って、バスに乗って移動。

およそ一時間後には、俺達は目的地に到着した。

その建物の前で、俺は思わず足を止めて、呆然と見上げた。

「着いた?悠理君、ここ?」

「…」

その建物の名前は、『見聞広がるワールド 深海魚水族館』。

…なんか、何処かで聞いたような名前。

違うだろ?ここじゃないよ。

多分この近くに、別の水族館があるんだよ。

しかし、俺のスマホのナビアプリは無情にも。

「目的地に到着しました。お疲れ様です」と告げ。

勝手に、ガイドを終了してしまった。

…成程。ここが目的地ね。

俺は確かに、水族館までの行き方を教えてくれと頼んだよ。

でもさ。

誰が…「深海魚」水族館に連れていけと言った?

つーか、『見聞広がるワールド』って、この間の『爬虫類の館』と同じ系列じゃないかよ。

爬虫類の動物園のみならず、深海魚の水族館まで作るとは。

誰が来るんだよこんなところ。って、俺達も来てるんだけどさ。

ごめんな、深海魚好きな人。

でも、俺が求めていたのはそういう水族館じゃない。

もっとこう、ペンギンの餌やり体験とか、イルカの触れ合い体験とかが出来る…。

ああいう、子供が喜びそうなベタな水族館だよ。

あれを求めてたんだよ。深海魚じゃなくてさ。

もっとちゃんと調べてから来れば良かった。

後悔、先に立たず。

炎天下の中、期待してここまでついてきてくれた寿々花さんに、何と言えば良いんだ。

「…?悠理君、どうしたの?何で止まってるの?」

呆然と立ち尽くす俺に、寿々花さんがきょとんと首を傾げた。

「…あの、寿々花さん…。ごめん、本当ごめんな」

「何が?何で謝るの?」

「いや、その…。なんか、思ってたのとちょっと…いや、だいぶ違う場所に来ちゃったから…」

まさか寿々花さんも、深海魚の水族館に連れてこられるとは思ってなかっただろうな。

ただただ、本当に申し訳ない。

「何で?水族館、って書いてあるよ」

確かに水族館だけど、その前に「深海魚」って書いてあるのが見えないのか?

「それとも、ここも休館なの?」

「え?いや…。…開いてるみたいだけど…」

『爬虫類の館』と同じ系列の施設だけど、ここは普通に開館中みたいだな。

でも、俺が言いたいのはそういうことじゃなくて。