アンハッピー・ウエディング〜前編〜

夏休み初日。






…しかしあれだよな。いっつも、毎年思うけどさ。

夏休みのお昼ご飯って、レパートリーに困るよな。

突然何だ、って思われるかもしれないけど。

台所を預かる身としては、結構深刻な問題って言うか。

これから長い夏休み、毎日昼ご飯どうしようかなーって思う。

ついつい、冷凍のパスタとか冷凍チャーハンとか、外食に頼ってしまいそうだが。

我が家には今、昼食に最適な食材がある。

というのも。

「…すげー…。マジでピンク色だ」

寿々花さんが、豪華客船『ブルーローズ・ドリーム号』で買ってきたお土産。

そう、外国産のインスタントラーメンである。

あれを、お昼ご飯に作ってみた。

パッケージ、何語で書かれてんのか全然読めなかったんだけど。

作り方見ても読めなくて、何となく雰囲気で作ってみた。

かろうじて数字だけはアラビア数字だったから、何とか読めた。

「3」って書いてあるから、多分3分茹でろってことだろ?

麺は普通の、日本産のインスタントラーメンみたいな感じで、黄色っぽいノンフライ麺だった。

ちょっとカビたような匂いがしなくもないけど、見た目黒くなったりはしてないから、多分大丈夫。

問題はスープだった。

粉末スープをお湯に溶かした途端、スープが濃いピンク色に染まった。

何これ。何味?

絶対怪しいよ。これ。人を殺せそうな色してるもん。

そして、匂い。

さっきから、物凄い匂いがするんだわ。

キッチンに立ち込める、薬臭いケミカルな香り。

…ヤバそうだな。

折角だから、寿々花さんのお土産のインスタントラーメン、お昼ご飯に食べてみようと思ったけどさ。

やっぱり、やめといた方が良かったような気がしてきた。

焼きそば…。焼きそば作れば良かった。

湯気を立てるインスタントラーメンのどんぶり見つめながら、しばし呆然と眺めていた。

…すると。

「悠理くーん。さっきね、おっきいシャボン玉が…。…ふぇ?」

庭で、誕生日プレゼントのシャボン玉の玩具で遊んでいた寿々花さんが、リビングに戻ってきた。

そして、室内に立ち込めるケミカルな香りと、その発生源であるインスタントラーメンのどんぶりを眺めた。

「…くんくん。…何だか面白い匂いがするね」

「…そうだな…」

「大丈夫だよ、悠理君。悠理君のご飯はいっつも美味しいから。私なんて中学生の頃、調理実習でハンバーグ作ったら、試食した先生が気を失って倒れたことあるから。それに比べたら悠理君は全然、」

「待て。違う。別に失敗した訳じゃねーよ」

元々こういうものなんだよ。これは。

…つーか、家庭科の先生を気絶させたハンバーグって、どんなのだ?

…恐ろしくて、これ以上は聞けない。