アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「『ブルーローズ・ドリーム号』の視聴覚ルームでしか観られない、オリジナルホラー映画の上映もあったんだよ」

と、寿々花さんか教えてくれた。

オリジナルホラー映画って何だよ。

当ホテルオリジナルメニューとかじゃなくて?オリジナルホラー映画?

「ど、どんな映画なんだ?それ…」

「騙されてクルーズ船に乗った主人公達が、船の中で薬や音楽で洗脳されて、洗脳大国に拉致されるっていうストーリーだった」

怖っ…。

幽霊より怖い人間の話って奴か。

まぁ、別にフィクションだからだいじょう、

「監督の実体験に基づいた話なんだって」

「…嘘だろ…?」

どんな体験してんの?その監督。

あんたって人は。クラスメイト達が、優雅にプールで泳いだりショーを観たりダンスを楽しんでる間に。

一人で、サイコなホラー映画を観てたっていうのか。

もっと他になかったのか?有意義な過ごし方…。

…ヘビとかワニを見てた俺が言うことじゃないかもしれないけどさ。

…あ、そうだ。

「お弁当…どうだった?結局、レストランには行かなかったのか?」

「うん。海の見えるデッキで、悠理君のお弁当食べたんだよ。贅沢だねー」

…贅沢って言うか…。

…貧乏臭いって言うか。

「…弁当は?どうだった」

俺の渾身の…力作だったんだが。

すると、寿々花さんは。

「黒くてお化けみたいで、面白かった!」

とのこと。

「それに、食べたら美味しかったんだよ。悠理君凄いね。面白いね、きゃらべんって」

「そ、そうか」

何だか興奮してるみたいだから、喜んでもらえたってことで良い…ん、だよな?

「あんまり素敵なお弁当だから、通りすがりの人を何人か捕まえて、見てもらったんだー」

「…」

なんてことを。

度肝を抜かれただろうなぁ…。悲鳴をあげてなきゃ良いんだが。

「こんなに楽しい遠足は初めてだったよ。ありがとう悠理君」

…まぁ、寿々花さんが喜んでくれたようで何より。

「…悠理君の方は?ケセランパサラン、見た?」

うっ。

今度は俺に話を振ってくるのか…。

寿々花さんがさっきから、めちゃくちゃ楽しそうに遠足の思い出を語ってるのに。

まさか俺は、自称アンドロイドに案内してもらって爬虫類を見てました、とも言えず…。

あと、普通の動物園だったとしても、ケセランパサランはいないだろ。

「えっと…かなり小規模な動物園でさ。思ったよりは…あんまり」

「…楽しくなかったの?」

「いや、楽しくないことはないんだけど…。えーっと、ちょっと人を選ぶって言うか…」

爬虫類だからな。

決して、万人受けする動物じゃないと思う。

「そ、そうだ。これ、お土産な」

「お土産?わーい。…これなぁに?」

「ワニクッキーだって」

「…!ワニが入ってるの?」

自称アンドロイドと同じこと言ってんな。

「ワニは入ってないよ。ワニの形をしたクッキーだ。…それから、これも」

「こっちはなぁに?」

「ハンカチだよ。カメレオンの…」

「わーい。ありがとう悠理君。大事にするね」

カメレオンなんてキモい、と言われるかとびくびくしていたのだが。

そんなことはなかったようで、安心した。