アンハッピー・ウエディング〜前編〜

シャワーを浴びてさっぱりしたらしい寿々花さんが、リビングに戻ってきた。

疲れた顔をしていた寿々花さんだが、風呂に入って少し元気が出たらしく。

「悠理君、悠理君。これ、お土産ー」

早速、買ってきたお土産を見せに来た。

「早速お土産かよ…。何買ってきたんだ?」

「はい、こっちが米粉の麺だって」

外国産の、米粉麺のインスタントラーメンだった。

何これ。…フォーって奴?

「これは、チーズ味なんだって」

パッケージに、でかでかと黄色いチーズの絵が描いてあるインスタントラーメン。

チーズ味のラーメンって何だよ。美味いのか?それ。

「これはスープがピンク色なんだって」

どぎつい濃いピンク色のパッケージのインスタントラーメン。

果てしなく食欲がそそられない色である。

「それからこっちが、きゅうり味」

分かってると思うが、これも外国のインスタントラーメン。

きゅうり味って何だよ。絶対地雷だろ。

「これがマッシュルーム味。外国では割とメジャーな味なんだって」

マッシュルーム味のインスタントラーメンなんかあるのか。

それ、どんな味なんだ?…マッシュルームか。

「これは…何味かよく分からないけど、パッケージが可愛いから買っちゃった」

とうとう、味も分からないインスタントラーメンが出てきた。

パッケージに騙されるな。地雷が入ってたらどうするんだよ。

「最後に、これが『ブルーローズ・ドリーム号』限定の、青薔薇味のインスタントラーメンだって」

…。

…それ、マジで何味なんだ?

甘いの?辛いの?苦いの?全然味の想像がつかない。

…まぁ、それは良いんだけどさ。

「…何で、お土産全部インスタントラーメンなんだ?」

「…ふぇ?」

そんなきょとんと首を傾げられたら、こちらとしては何も言えない。

インスタントラーメンに造形の深い寿々花さんのこと、お土産屋さんで世界のインスタントラーメンを見て、手を伸ばさずにいられなかったんだろう。

しかし、世界の様々なお土産が並んでいるクルーズ船に乗って。
 
買ってきたお土産が、全部インスタントラーメンとは。

どうやって消費しよう?これ。

「…楽しかったか?船」

「うん。展望台みたいな塔が立っててね、そこに登ったら景色が綺麗だったんだー」

「そうか。…水着とかドレスとか持っていってなかったけど、船の中で何やってたんだ?」

「視聴覚ルームで、外国の映画観てた」

へぇー。映画か。

お洒落な洋画って奴?

「字幕付きとか吹き替えじゃないんだよ。オリジナルの」

「凄いな。何て言ってるのか分かるのか?」

「うん。難しい言葉じゃなければ、大体」

こう見えてバイリンガル、どころかマルチリンガルな寿々花さんである。

ポテンシャルが高い。

俺、字幕もなし、吹き替えもなしの洋画なんて観れないよ。何を言ってんのか分からない。

「面白かったか?外国の映画って、俺見たことないけど…ミステリーとか?」

「ううん。ホラー映画。ゾンビがいっぱい襲ってきたんだー」

「…」

あんたは、誰もが憧れる豪華客船に乗ってもなお。

ショーやミュージカルではなく、わざわざ外国のホラー映画を観てたのかよ。

…勿体なっ…。