アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「もぐもぐ…。この唐揚げ、めっちゃ美味い。やっぱり弁当には唐揚げだよな」

「そうか。良かったな」

「こっちのパスタも美味い。弁当にパスタ入れるなんて、洒落てんなー」

小さいアルミカップに入れた、一口サイズのパスタである。

冷凍食品のお弁当のおかずだと、定番だよな。

唐揚げも、パスタも。

如何せん、うちは寿々花さんが子供舌だからさ。

お弁当のおかずも、自然と子供っぽい味付けのメニューになるんだよな。

俺としては、作りやすくて良いけど。

「…あのさー。星見の兄さん」

もぐもぐと弁当を食べる手を動かしながら、雛堂が声を掛けてきた。

「どうした」

「さっきから、ずっと気になってることがあるんだけどさー」

「何だよ?」

「文句じゃねぇんだよ?文句つけてるんじゃなくて、普通に疑問なんだけど」

そうか。言ってみろよ。

「…なんかこの弁当、黒くね?」

「…それ、僕もずっと思ってました」

…気づいたか。

気づいてるだろうなぁとは思ってたよ。誰が見ても一目瞭然だもんな。

なんかこの弁当…黒くね?って。

…俺もそう思うよ。

だって、おかずの唐揚げの衣も、パスタも卵焼きも黒。

他のおかずも、ひじき、ナスの皮、ブラックオリーブなどを使った、黒いおかずラインナップ。

白米の上には、びっしりの海苔の佃煮。

さながら、真っ黒弁当である。

「唐揚げ、焦がしたのかと思いましたけど、焦げた味は全然しませんから…。何を使ったんですか?これ」

「竹炭パウダーを衣に混ぜて、黒くしたんだよ」

「成程。…こっちの黒いパスタは?」

「それはイカ墨パスタだ」

材料、揃えるの大変だった。

特に竹炭パウダー。なかなか売ってなくてさ。

いつも行ってるスーパーには置いてなくて、色々調べて買いに行ったんだ。

「もしかしてこれは、アレか?余分な弁当を作らされたことに対する、星見の兄さんの怒りと憎しみを表現した弁当なのか?星見の兄さんに毒を盛られる前に、今すぐ土下座して謝るべき?」

と、真剣な顔で雛堂が尋ねた。

何故そういう発想になるのか。

まぁ、こんな真っ黒弁当を渡されたら、そんな発想にもなるか。

「別にそうじゃねぇよ。すず…。えーと、俺の婚約者のリクエストに応えただけだ」

どのおかずも、寿々花さんのキャラ弁の余りなんだよ。

それで真っ黒なだけ。別に雛堂と乙無が憎いからじゃない。

本当に憎かったら、そんな相手に弁当なんて作ってこねーよ。

「リクエスト?星見の兄さんの嫁ちゃん、真っ黒弁当をリクエストしてんの?」

「あぁ。キャラ弁作ってあげるからリクエスト聞いたら、電子レンジの化け物のキャラ弁が良いって言われてな」

「あ、これ『イン・ザ・電子レンジ』のあいつ?成程、それっぽい」

そうか。そう思ってくれるか。

寿々花さんのリクエストに応える為に、俺、色々調べて頑張ったんだよ。