アンハッピー・ウエディング〜前編〜

小花衣先輩が新校舎に帰って、改めて。

俺は、先程手渡された紙袋を開いてみた。

中に入っているのは、今日の調理実習で作ったばかりの野菜料理達である。

「おぉ…。これがお嬢様方の調理実習で作った料理かー…」

「…なんか見覚えありますね」

…本当にな。

俺もめちゃくちゃ見覚えあるわ。

昨日作ったばっかだもんな。

何なら、今さっきまでその残りを一緒に食べてた。

「…」

雛堂は無言で、さっきまで食べていた、俺が持ってきたタッパーを眺め。

それから、さっき小花衣先輩が持ってきたばかりのタッパーを見比べた。

そして。

「…何で、星見の兄さんの晩飯の残りと、お嬢様方の調理実習で作った料理が丸被りしてんだよっ?」

と、叫んだ。

…まぁ当然の疑問だよなぁ。

「どういうことだよこれは?説明してもらおうかねぇ!?」

「いや、えーと。それは…ぐ、偶然?」

我ながら苦しい言い訳だった。

案の定。

「あー成程、偶然ねー。まぁまぁ、偶然そういうことも…って、ある訳ないだろがっ!」

仰る通り。

最高にキレのあるツッコミをありがとう。

「偶然か?偶然晩飯のメニューが丸被りすることなんかあるか!?」

「た、たまには…あるかもしれないだろ?」

「カレーとか唐揚げとかが被るなら分かるけど、フランス料理丸被りはねーよ!」

ごもっとも。

見事に同じメニューだもんなぁ…。当たり前だよ。レシピも同じなんだから。

「何で悠理さんが、今日行われた女子部二年生の調理実習のメニューを知ってるんですかね」

と、冷静に尋ねる乙無。

更に、雛堂も。

「どういうことなのか、洗いざらい説明してもらおうか。あぁん?」

…なんか、もう逃げられない雰囲気。

納得の行く説明をしなければ、追及から解放してもらえなさそうだ。特に雛堂。

えーと。何て言えば良いものか。まさか、無月院家のお嬢様のフィアンセでー…とか。

そんなところから説明しなければならないのか。

それは避けたい。

せめて、何とか傷を浅く済ませる言い訳を…。

「え、えっと…。か、隠してたけど…実は俺の…姉は、さっきの小花衣先輩と同級生で…」

と、必死に言い訳を口にしたが。

「嘘つけよ。さっき、星見の兄さんの姉ちゃんは、今日創立記念日で学校休みだって言ってたじゃん」

そうだった。

小花衣先輩と同級生なら、「姉」も今日は普通に授業がなきゃおかしいじゃん。

あぁ、もう。これまでつまらない嘘を重ねていた弊害が。

「え、えーっと…」

何で俺がこんな目に?

何も悪いことしてないはずなのに。何故尋問を受けてるんだ。

もしかしてこれ、俺と寿々花さんの関係まで話さなきゃいけない奴…?

…。

「…何だか、言いたくない事情があるようですね」

俺の心の内の修羅場を察したらしく。

乙無が気を遣って、俺にそう言った。