アンハッピー・ウエディング〜前編〜

あんまりびっくりして、食べていたサラダを噛まずに飲み込んでしまった。

危なっ。喉に詰まらせるところだった。

「えっ…!新校舎の女子生徒…!?な、何でこんなところにいんの?」

雛堂が、声を潜めてそう言った。

いや、そんなの俺が知りたいから。

廊下も壁も、教室の床も傷んでミシミシ言ってるような古い校舎に。

白いワンピースの制服を着た新校舎のお嬢様は、大層不釣り合いに見えた。

しかし、そんなことはどうでも良い。

何でこの人が、ここに。

突如として教室に現れたのは、俺と同じ部園芸委員の…小花衣美園先輩だった。

「お邪魔するわね」

小花衣先輩は、自分がクラス中の驚愕と注目を浴びていることにも気づかず。

いつも通りのたおやかな微笑みを浮かべて、何の躊躇いもなく教室に入ってきた。

新校舎のお嬢様が、単身、野郎共の巣窟である旧校舎の教室に入ってくるなんて。

オオカミの群れの中に、一匹だけ羊が迷い込んだようなものだぞ。

命知らずか?このお嬢様。

うちの寿々花さんと言い、この小花衣先輩と言い…お嬢様って奴は、何故こうも危機感が薄いのか。

しかも。

「えっ、ちょっ、こっちに来たぞ!?」

小花衣先輩は、真っ直ぐに俺の方にやって来るではないか。

これには、雛堂も激しく動揺。

俺もめちゃくちゃ動揺していた。

何なら、クラスメイト全員が小花衣先輩を見つめていた。

興味なさそうな顔をしていたのは、乙無だけである。

さすが邪神の眷属。貫禄が違うな。

って、そんなこともどうでも良いんだっての。

「悠理さん、ごきげんよう。ごめんなさいね、お昼休みに邪魔をして」

小花衣先輩は、はっきりと俺の名前を呼んで声をかけてきた。

やっぱり俺に用があったのか?

何で?今日は月曜日だろ?

園芸委員の活動があるのは、水曜日だったはずだが?

「ちょ、おい。この美少女お嬢様と知り合いかよ?」

雛堂が肘で俺を突き、小声で食い気味に聞いてきた。

し、知り合いって言うか…まぁ、知り合いなんだけど…。

「いや、その。同じ園芸委員の…」

と、答えかけたが。

その前に、小花衣先輩が持参した紙袋を差し出してきた。

な…何?

「え、えっと…小花衣先輩…?」

「これ、差し入れよ。調理実習で作ったものなの」

えっ?

恐る恐る受け取った紙袋を覗いてみると、そこには料理の入ったタッパーが入っていた。

「ちょ…調理実習で…?」

「えぇ。今朝の家庭科の授業で、調理実習があったの」

それは知ってます。

でも、何故その調理実習で作ったものがここにあるんだ?

ちょっと誰か、分かるように説明してくれ。