アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「調理実習は明日なのに…。私、全然克服出来なかった…」

大量に残された料理の数々を見て、寿々花さんはどよーん、と沈んでいた。

そ、そんな落ち込まなくても。

「悠理君があんなに頑張って、協力してくれたのに…」

「そんな…」

「私、やっぱり駄目な子なのかな…」

…やべぇ。めっちゃ落ち込んじゃってる。

「…あのなぁ。あんたは別に駄目な子じゃねぇよ」

「だって、全然克服出来なかったよ?」

「全然ってことはないだろ。最初に比べたら随分進歩してる」

最初の日を覚えてるか?

一口食べて、全部吐き出しちゃってたじゃん。

今は何とか呑み込めるようになってるんだから、それだけでも相当頑張ってるよ。

濃い目の味付けにすれば、それなりに食べられるようになった食材も増えてるからな。

お陰で俺は今後、夕食のニンジンをいちいち星型にくり抜く手間が省けた。

これだけでも非常に助かる。

「それにな。本当に駄目な子だったら、そもそも克服しようと努力したりしないよ」

この一言に尽きる。

あんた、ぽやんとしてる癖に根は真面目なんだよな。 

中間試験の時も思ったけど。

「頑張ったんだから、立派なもんじゃないか。俺は結果よりも、寿々花さんが努力したその過程を褒めたいね」

「…そうかな…?」

「そうだよ。だから堂々としていれば良いんだよ」

「…堂々としてても、食べられるようにはならないけど」

それはまぁ…そうなんだけど。

結局明日どうすんの?っていう問題は、何も解決してないからな。
 
どうしたものかな…明日。調理実習本番…。

まぁ、ここまで来たら難しいことは考えなくて良い。

「素直に、『私これ苦手だから』って言って良いんじゃないか?」

この期に及んで、嘘をつく必要もあるまい。

無理して食べて、皆の前でリバースするよりマシだろ。 

「あるいは…もう禁じ手だ。仮病だよ、仮病。具合が悪くなったから保健室行きますって言って逃げろ」

「…良いの?そんなことして…」

「良いよ。俺が許す」

それだけ頑張ったから。仮病使うくらい、俺が許すよ。

実際、無理して食べたらマジで保健室に担ぎ込まれかねないからな。

無理をする必要はない。これ以上。

…それと。

「明日帰ってきたら、何でも好きなもの作ってやるよ」

「本当?…じゃあオムライスが食べたい」

言うと思いました。

「分かった。じゃあそうしよう」

「うん。楽しみにしてるね」

あとは、明日を無事に乗り越えられるかどうか…だな。

寿々花さんの健闘を祈る。