アンハッピー・ウエディング〜前編〜

どうなることかと思ったが。

調理開始から一時間半後、無事に食卓に料理が並んだ。

寿々花さんに手伝ってもらったつもりが、むしろいつもより時間がかかったような気がする。

しかし、別に構わない。

手伝って欲しかったんじゃなくて、寿々花さんに自分の手で料理を作ってもらいたかったのだ。

自分の作ったものなら食べられるって、乙無も言ってたしな。

味付けも雛堂の助言に従って、ケチャップとソースを混ぜて煮詰めた、濃い目の甘い味付けにしてある。

ピーマン独特の青臭さは、これで消えているの思うのだが…どうだろう?

「…どうだ?食べられそうか?」

「うーん…」

寿々花さんはしばし、ピーマンの肉詰めを前にして睨み合っていた。

…ピーマンの肉詰めと睨み合うなよ。

「自分の手で作ったものなら食べられるかと思ったんだが…」

「?何で?」

「いや…。嫌いな食べ物でも、自分で作ったら、抵抗なく食べられる気がしないか?」

「そうかな?…自分で作るよりも、悠理君のご飯の方が美味しく見えるけど」

あ、そう…。

身も蓋もない…。何の為に手伝ってもらったんだか。

「…まぁ、何だ。とりあえず、無理はしないようにな」

また無理をして食べて、盛大にリバースするようなことになったら。

余計、ますますピーマンが食べられなくなりそう。

これ以上トラウマを増やすのは可哀想だからな…。

しかし。

「…もぐ」

意を決したのか、寿々花さんはピーマンの肉詰めを一口、口に入れた。

おっ。行った。

「…どうだ?」

「もぐもぐ…ごくん」

…飲み込んだ。

…大丈夫だよな?胃が氾濫を起こしたりしてないよな?

ゴミ箱、持ってきておいた方が良い?

「…どうだ?食べられそうか」

「…美味しくない…。美味しくないけど、昨日のよりは食べられる…かな?」

「お、おぉ…。それは良かった」

雛堂と乙無の作戦、無事に成功。

あんまり箸は進んでないけど、とりあえず一個くらいは食べてくれた。

これだけでピーマンを克服しました、とまでは行かないけど。

何とか飲み込むことが出来たのだから、これは大きな進歩だよ。

この調子で、少しずつハードルを上げていこう。

そうすれば、いつか食べられるようになる…はず。

果たして、それが調理実習当日に間に合うのどうかは…今は考えないでおこう。

…ちなみに、余った分のピーマンの肉詰めは。

タッパーに入れて、翌日学校に持っていって、昼休みに雛堂と乙無に振る舞った。

お礼を兼ねてな。