アンハッピー・ウエディング〜前編〜

帰宅後。

早速、二人に教わった方法を試してみることにした。

そんな訳なので。

「寿々花さん。今日はちょっと、夕飯作るのを手伝ってくれないか?」

と、聞いてみた。

寿々花さんが性格の悪いお嬢様だったら、「それはあなたの仕事でしょ、私はやらない」とでも言いそうなものだが。

うちのお嬢様は、素直、かつ精神年齢が幼稚園児レベルなので。

「え、手伝っても良いの?やるー」

意気揚々と、そりゃもう嬉々としてキッチンにやって来た。

やる気満々で大変宜しい。

「ここが悠理君の聖域…。何だか神聖だね…!」

なんか妙なこと口走ってるが、無視しておこう。

ただのキッチンだよ。何が聖域だ。

「それより、ほら。これ着て」

「うん、分かったー」

俺は、自分のお古のエプロンを寿々花さんに渡した。

如何せん男モノだから、ちょっとぶかぶかではあるものの。

何も着ないよりはマシだろう。多分。

エプロンつけると、「さぁ、これから料理頑張るぞ」って気分にならないか?

「悠理君、私何したら良いの?」

「…そうだな…」

手伝ってもらう…と決めたのは良いが。

あんまり大したことはさせられないぞ。

何せこのお嬢様は、玉子焼きを爆発させて家庭科室を破壊しかけたり。

目を離した隙にキッチンに入って、魔女の秘薬を錬成するほどの「料理上手」だからな。

迂闊に任せ過ぎると、まーた食べられないものを作る…どころか。

俺の聖域、大事なキッチンが消し炭と化す恐れもある。

…手伝いは慎重にやってもらわないとな。

そうだと言うのに。

「何でも出来るよ、私。悠理君ほどじゃないけど、料理は得意だから」

えへん、と胸を張る寿々花さん。

何?その自信。

料理が得意な奴は、玉子焼きを爆発させたりはしないだろ。

「本当に得意なのか?」

「うん。プロのコツを知ってるから」

ほう。そりゃ大きく出たな。

じゃあ、試しに。

「例えば、どんなコツを知ってるんだ?」

「うーん。…5分のカップ麺はね、ちょっと早めに4分で蓋を開けたら、良い感じのアルデンテで食べられるんだよ」

カップ麺の話かよ。

そんなのコツでも何でもなく、誰でも知ってることだろ。

つーか、ラーメンにアルデンテとかいう概念あんの…?

…あぁ、もう良い。

「それは分かったから。そう…じゃあ俺が材料を切るから」

「私も包丁使えるよ?」

「危ないから駄目」

おっちょこちょいなんだから。うっかり手を切ったら大変だ。

それにな、俺は寿々花さんに、料理の一番楽しいところを体験して欲しいんだよ。

その方がモチベーション上がるかと思って。

料理の一番楽しいところって、やっぱり下拵えとか材料を揃える行程じゃなくて。

焼いたり味付けしたりするところが、一番楽しいと思うんだよ。

だから、焼成と味付けを寿々花さんに頼んで。

その前の下拵えは、俺がやろう。

あとはまぁ…適当に、寿々花さんでも出来そうなことを手伝ってもらうとするかな。