アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「味付けを変える?って?」

「うちのチビ共も好き嫌い多くてさ。チビ共の好き嫌いをなくす為に、よくやる方法なんだけど…」

と、雛堂は説明した。

「例えば、シイタケが苦手だとするじゃん?」

あぁ。寿々花さんもシイタケ苦手だな。

「そしたら、味付けを出来るだけ濃くして、元のシイタケの風味を感じにくくすんの」

「味付けを、出来るだけ濃く…」

「あとは、ケチャップとかマヨネーズとか焼肉のタレとか、子供っぽい甘い味付けにする、とかな。お陰で自分、未だにケチャップ味とか焼肉のタレ味とか、子供っぽい味が大好きだわ」

いや、使えると思うぞ。その方法。

寿々花さんも子供舌だからな。

ハムスターランドのレストランで一万円のコース料理を食べながら、俺の作ったオムライスの方が美味しいと宣うくらいだから。

「あとは、揚げ物とか肉詰めにする。これもよく使う手だな」

「…って言うのは?」

「ほら、チビ共って唐揚げとかフライとか好きじゃん?焼き魚とか煮魚は食べないけど、アジフライや鮭の唐揚げはパクパク食べんの」

成程、あるあるだな。

揚げ物にすると、その食材独特の風味がマイルドになるんだよな。

「それに、肉詰めな。ピーマンとかシイタケ単体は食わないけど、肉詰めにすると食うんだなー、これが」

「成程。肉詰めにすれば、甘い味付けにもしやすいですもんね」

「そうそう。まぁ、肉詰め出来る形状じゃないと無理だから。ピーマンとシイタケ以外は難しいかもしれないけど」

いや、充分だよ。

まさに、そのピーマンとシイタケが苦手なんだから。克服出来る方法を提案してくれるのは有り難い。

俺にはなかった発想だ。

「雛堂…。あんた、良い方法知ってるな」

その方法なら、すぐに実行に移せる。

「いや、うちはチビ共が多いからさ。好き嫌いの克服とかは日常茶飯なんだわ」

「それなのに、大也さんはその歳になるまで、まだ好き嫌いを克服出来てないんですね」

「うるせー!ナマのトマトはフライにも出来ないし、納豆だってそのまま食うしかねーだろ!」

ま、まぁそれは仕方ない。

食材によって調理方法を変えられるなら、さっき雛堂の言ったやり方を使えるが。

ナマで食べる食材は、そういう訳にもいかないもんな。

でも、それ以外の食材だったら、その手が使える。

寿々花さんは子供舌だし。やってみる価値はありそうだ。

「雛堂。俺、今日あんたのことを初めて尊敬したよ」

「おう。今日に限らず、いつも尊敬してくれて良いぞ」

…それは遠慮しておくよ。