単刀直入に聞いてみると、雛堂はびっくりした様子で。

「…へ?どうしたんだよ、星見の兄さん。藪から棒に」

「いや…。どうなのかなと思って…」

「好き嫌いって、食べ物の好き嫌いのこと?そりゃあるよ。誰にでもあるだろ?」

…まぁ、そうだな。

好き嫌いなく何でも食べられる人は、めちゃくちゃ偉いと思う。

「ちなみに、雛堂は何が苦手なんだ?」

「そうだなー。やっぱり一番嫌いなのは納豆だな」

納豆だってよ。

嫌いな食べ物の定番だよな。

好き嫌いが分かれる食べ物の代表って感じ。

そうか…。雛堂、納豆駄目なのか…。

「美味いと思うけどな。納豆…」

「何がだよ。あれの何処が美味いの?臭いわ、ネバネバして気持ち悪いわ…。あんなもん食ってる奴の気が知れねぇよ」

あんたは今、全国の納豆好きな人を敵に回したな。

でも、まぁ独特の匂いと食感だもんな。

口に合わない人は合わないだろう。

他のどんなものでも食べられるけど、納豆だけはどうしても無理、って言ってる人を聞いたことがあるよ。

それくらい好き嫌いの大きく分かれる食べ物である。

俺は好きだよ、納豆。

醤油と辛子と、小口切りにした青ネギを混ぜてご飯に乗せてさ。

ついでに卵の黄身とか混ぜたら、もう最高のご飯の友だよな。

やべ。お腹空いてきた。今弁当食べたばっかりなのに。

「納豆だけか?嫌いなの…」

「あとね、トマトが無理」

トマトか。

これも…まぁまぁ定番な嫌いな食べ物だよな。

小学校の時いたよ。トマト嫌いな人。

酸っぱいのが嫌、とか。食感がぐちゃぐちゃしてて無理、とか言ってた。

…ん?でも。

「大也さん、今食べてるのは良いんですか」

俺の代わりに、乙無がそう尋ねた。

今現在、雛堂が食べている菓子パン。

コッペパンの中にナポリタンを挟んだ、焼きそばパンならぬ、ナポリタンパンである。

これも2割引シールがついている。

「トマトが苦手なのに、それは良いんですか」

味は嫌いだけど、安さに釣られて買ったか?

しかし。

「トマトが苦手なだけであって、トマト味はセーフなんだよ」

と、雛堂。

あー、成程。そういうことね。

「生のトマトは無理だけど、加熱して潰してたら大丈夫ってことか?」

「そーそー」

区別するのが面倒臭いパターンだな。

「じゃあ、ケチャップとかミネストローネとか、トマトベースのミートソーススパゲティは大丈夫なんだな」

「うん。むしろケチャップは正義だろ」

「でも、ナマのトマトが入ったサラダは…」

「青虫にでも食わせてろ、って思うね」

全国のナマのトマト好きな人、大激怒。

トマトは無理だけど、トマト味はセーフ…。

一体何がどう違うって言うんだ。トマト味が食べられるなら、トマトもそのまま食べろよ。

食感が無理ってこと?

俺にはよく分からない感覚である。