すると。

「抜け駆けしてハムスターデビューしてきたってことは、さぞや良いお土産を買ってきてくれたんだろうなぁ?」

超高圧的な雛堂。

何で偉そうなんだよ。お土産買ってきてもらう立場で。

「あんたの言う、良いお土産の基準は分からないけど…。一応買ってきたよ」

文句言われてもどうしようもないからな。

お土産のリクエスト、先に聞いておけば良かったかな。

俺は雛堂と乙無に、それぞれお土産の入った紙袋を渡した。

「おぉ、さんきゅ!」

「ありがとうございます。ハムスターランドは、紙袋もお洒落ですね」

だよな。

わざわざ小分けの袋までつけてくれるんだぜ。親切だな。

「で、中身は何だよ?」

雛堂は俺に断ることもなく、紙袋の中身を覗いた。

おい、ここで見るのかよ。

一応教室の中だぞ。他の生徒や教師に見られたら…。

しかし、雛堂は全く気にしていなかった。

俺が二人に買ってきたお土産は、まず洒落た缶に入ったチョコレートと。

ハムッフィーフレンズのハンドタオル、それからピンバッチである。

…どう?俺のお土産センス。

「…」

雛堂は無言で、紙袋の中を見つめていた。

「…何だよ、雛堂…。黙ってないで、言いたいことがあったら言えよ」

「あ、いや…。予想以上に豪華なお土産だったから、逆にリアクションに困ってた」

あ、そう…。気に入ってもらえたという解釈で良いんだな?

「乙無は?」 

「ありがとうございます。…女子みたいなお土産のセンスですね」

悪かったな。

あまりにも色んなお土産がたくさん売ってるから、段々何を買って良いのか分からなくなるんだよ。

寿々花さんから目を離す訳にもいかなかったし。じっくり選んでる暇もなくて。

ちなみに、母さんにはチョコレート缶とクッキー缶を買って、送っておいた。

明日頃には届くんじゃないかな。

「うへぁー、ハムスターランドのお土産だ!やったー。星見の兄さん、愛してる!」

「はいはい」

「羨ましいなぁ。自分も、仲良くハムスターランド旅行に連れてってくれる優しい姉が欲しいぜ」

…姉じゃないけどな。何度も言うけど。

本当に羨ましいのは、ハムスターランド旅行の優待チケットをフランスから送ってくれる姉だろ。

「星見の兄さんが優雅にハムスターデビューしてる間に、自分なんかなぁ、先週公開されたばっかの新作映画観に行ってたぜ」

「そうなのか?」

「おうよ。近くの映画館じゃやってねーから、わざわざ電車乗って行ったんだぞ」

それって、もしかして。

「土曜日のこと?」

「うん。めっちゃ雨降ってた日」

…成程。

雨男はあんたかよ。

「前評判めっちゃ良かったから、期待してたのにさぁ。雨ん中電車まで乗っていったのに、くっそつまんない映画だったんだわ」

「そうか…。それは気の毒だったな」

「全くだよ!畜生めと思ってたけど、星見の兄さんにハムスターランドのお土産もらったから、なんか元気出たわ」

良かったな。

喜んでもらえたようで、安心したよ。