二人で、スパークリングカクテルを飲み干してから。

「悠理君、帰る前にパレード見たい。パレード」

と、寿々花さんのおねだりである。

パレードか…。そういや、今日はまだ見てないな…。

「良いよ。見に行こうか」

「やったー。行こー」

すくっと立ち上がって、今にも駆け出しそうになった寿々花さんの肩を、ガシッと掴んで止めた。

「ちょっと待て」

「ふぇ?」

ふぇ、じゃないんだって。

この人混みだ。パレードが行われる広場周辺は、きっとこの場所よりずっと人口密度が高いはず。

何も対策せず向かったら、またはぐれてしまう可能性がある。

俺も、この人混みの中で寿々花さんを見失わない自信がない。

またはぐれて、寿々花さんを探し回ることになるかもしれない。

それだけは避けなくては。

そうならない為には…。

「…手を」

「手?」

「手を繋ぐんだよ。そうしたら、はぐれずに済むだろ」

「…」

ぽやーんとした表情で、寿々花さんは俺の顔を見つめていた。

…何だよ、その顔は。

俺、何か変なこと言ったか?

「どうした?何か問題があるか?」

「…問題…って言うか…」

「…言うか?」

「…ううん、ない。良いよ。手を繋いでいこう」

よし、それで良い。

さすがに手を繋いで歩けば、はぐれずに済むだろう。

手綱を握ったような気分。

「あ、でも…」

ぴた、と寿々花さんが制止した。

「どうした?」

「ハムトーニちゃん抱っこしてるから、手が埋まっちゃってる。どうしよう?」

…そういや、俺も片手にぬいぐるみ抱いてるんだった。

焦りまくってたから忘れてた。

もしかして俺、ぬいぐるみを抱いたまま園内を走り待ってたのか?

多分、すげー滑稽な姿だったろうなぁ…。

必死になり過ぎてて、全然そんなこと気づかなかった。

手を繋いで歩くなら、ぬいぐるみは邪魔だな。

「…仕方ない。ぬいぐるみ達には、カバンの中で我慢してもらおうぜ」

「そうだね。ごめんねハムトーニちゃん」

俺は、お土産袋の中にぬいぐるみをしまい。

寿々花さんも、カバンの中にハムトーニのぬいぐるみを入れた。

これで、お互い片手がフリーになったな。

「ほら、手」

「うん。行こー」

ぎゅっと手を繋いで、俺と寿々花さんはパレードの行われる広場に向かった。

寿々花さんの手はぽかぽかと温かくて、子供体温だなぁ、と思った。