アンハッピー・ウエディング〜前編〜

しかし。
 
高い代金を要求するが、出したお金の分は満足させてくれるのがハムスターランドクオリティ。

運ばれてきた前菜、スープ、メインディッシュからデザートまで。

シェフ、これ本当に気まぐれで作ってるのか?と聞きたくなるくらい、手の込んだ料理の数々。

普通に高級レストランのディナーだよ。これは。

いや、高級レストランなんだけどさ。

どれもこれもお洒落だし、美味しいし、高級感が半端じゃない。

生涯で一度か二度、お目にかかれたら幸せだよなぁ。

…そうだというのに。

「もぐもぐ。悠理君のご飯の方が美味しいね」

…この罰当たりお嬢様は、何を口走ってるんだ?

俺の聞き違いだと良いのだが。

「こういうところのご飯ってどれも、大きいお皿にちまっと盛ってあるよね」

それは…高級料理あるあるだけども。

小鉢に盛り付けたんじゃ、お洒落じゃないだろ?

「料理の名前を聞いても、よく分かんないし。…ぽわれって何?びねぐれっとって?」

「…さぁ…」

ポワレ…は聞いたことがあるような気がするけど、どういう意味なんだろうな?

ヴィネグレットは俺も分からん。 

分からないのに食べてる。食材が勿体ないな。

良いんだよ、細かいことは。

何となくお洒落で美味しかったら、それで良いの。

「昨日食べた、悠理君の肉じゃがの方が美味しかったなー」

「…この罰当たり娘め…」

一万円のシェフの気まぐれコースと、スーパーの割引シール付き牛肉で作った俺の肉じゃがを、同列に語るんじゃない。

俺は貧乏舌だし、寿々花さんは子供舌だし。

シェフに申し訳ない。

せめて分からないなりに、味わって食べるよ。