アンハッピー・ウエディング〜前編〜

…いやはや、全く不甲斐ないばかり。

「…悪かったな。…なんつーか…。…情けなくて」

三大マウンテンを体験した後、いくつかのアトラクションを楽しみ。

パレードを見たりなんかもして、段々と日が暮れてきた。

そろそろディナーにしようということで、ガイドブックおすすめのレストランに入った。

注文したメニューが届くのを待つ間、俺は寿々花さんに謝罪した。

…謝りたかったんだよ。

まさか、自分がこんなに絶叫系が苦手だとは…。

お陰で、寿々花さんリクエストのアトラクション、あんまり乗れなかった。

代わりに、イッツ・ア・ハムスターワールドとか、ひまわりのタネハントみたいな。

非絶叫系のアトラクションばっかり付き合わせてしまった。

俺が絶叫系に弱かったばかりに、つまらない思いをさせてしまった。

それを謝りたかった。

こんなところで謝られても困る、って思うかもしれないけど。

俺がもっと、こう…ビッグハムスター・マウンテンくらい何度でも乗ってやるよ、と。

威勢を張れるくらい、鋼の心臓を持ってたら良かったんだけどな。

生憎、俺の心臓は豆腐並みに軟弱だったようだ。

良いじゃん、豆腐。ネギ乗せて醤油かけたら美味いし。

それはそれとして。

折角初めてのハムスターランドを楽しみに来た寿々花さんに、存分に付き合ってやれなかったのは申し訳なかった。

しかし。

「…ほぇ?」

寿々花さんは、俺が何を謝っているのか分からなかったようで。

不思議そうな顔で、きょとんと首を傾げていた。

「もっと色々乗りたかったんだろ?絶叫系…」

「…?ううん、別に。楽しかったよ」

「…そうか」

そう言ってくれてるのか。ありがとうな。

「俺がもっと、こう…。こんな情けない奴じゃなくて、喜んでジェットコースターに付き合ってやれたら良かったんだが…」

「見て悠理君、これ。サラダがハムスターの形だー」

「…俺の話、聞いてる?」

謝ってんだけど。全然聞いてない。

ハムスターの形に盛り付けられたマッシュポテトに夢中。

…分かったよ。

あんたが気にしてないなら、俺ももう気にするのはやめる。

それより、目の前の豪華なディナーを楽しむことにするよ。

特に食べたいもののリクエストもなかったので、ガイドブックおすすめのレストランに入って。

メニューを見たときは、度肝を抜かれたよ。

シェフの気まぐれコース。一人一万円だぜ?

やべーよ、これがハムスターランドクオリティ。

普段の外食でさえ、千円を超えると「ちょっと贅沢だなー」と思うくらい貧乏性なのに。

一食で一万円…。ほぼ一週間分の食費なんだけど。

あまりに勿体無い気がして、寿々花さんだけレストランで食べて。

俺はホテルに帰ってから、適当にホテルのルームサービスでも頼もうかなとも思ったのだが。

さすがに、寿々花さんを一人置き去りにする訳にもいかず。

それに、こういうところに来たら、値段のことを言うのはみみっちいよなぁと思って…。

たまの贅沢ということで、注文してしまった。

こんな贅沢は覚えちゃいかんな。