アンハッピー・ウエディング〜前編〜

こうして、俺は寿々花さんに付き合って。

三大マウンテン最後のアトラクションとなる、ハムラッシュ・マウンテンに乗った。

で、俺がどうなったかというと…。

「はぁ、はぁ…。ぜー、ぜー…」

…生きてる?生きてるよな?俺。

足元が覚束ないんだけど。

自分の心臓の音しか聞こえない状態。

あまりにフラフラして、アトラクションから降りるときに蹴躓きそうになった。

キャストさんに、「大丈夫ですか?」って聞かれたよ。

「や、はい。大丈夫です…」と震える声で答えて、こうして外に出てきた。

空気が美味しい。

なんか空がオレンジ色に見えるんだけど、これは俺の幻覚なのだろうか。

山のてっぺんに、心臓を置き忘れてきたような気がする…。

…そうだというのに。

「面白かったー。ひゅーんって落ちたね。ひゅーんって」

寿々花さんは、超楽しそうで超余裕だった。

畜生…。あんたの心臓、さては剛毛が生えてるな?

今ばかりは羨ましい。

男の俺の方がビビりなんて…。なんて情けない。

しかも。

「見て、落っこちるときの写真。悠理君面白い顔してるー」

このアトラクション、急落下するときの瞬間を写真に撮って、有料で印刷してくれるサービスがあるらしく。

寿々花さんは写真を買って、それを指差して眺めていた。

おい、そんなもの買うなって。

落っこちる瞬間の、恐怖に怯えた情け無い俺の顔が写っていた。

自分の情けなさを写真に撮られたようで、非常に悔しい。

隣に座ってる寿々花さんが、けろっとした顔をしているから、余計に。

「よし、次はハムスターの海賊に乗ろう」

「ちょっ、まっ…。それも絶叫系なんだろ…!?」

ハムスターの海賊って何だよ。

怖いのか可愛らしいのか、はっきりしてくれ。

「それから、ハムスター・ツアーズにも乗らないと。さぁ、悠理君行こー」

「た、頼むから…ちょっと休ませてくれ…!」

このときばかりは恥も外聞もなく、情けなく頼み込んだのだった。