アンハッピー・ウエディング〜前編〜

俺と寿々花さんは二人で、イッツ・ア・ハムスターワールドというアトラクションに乗った。

めちゃくちゃ平和なアトラクションだった。

世界中、色んな種類のハムスターが並んでてさぁ。皆で声合わせて歌ってんの。

な?想像するだけで癒やされるだろ?

ただ、アトラクションが終わって、外に出てくる頃には。

頭の中を、同じ歌がずーっと延々ループしていた。

「面白かった〜。せかい〜じゅう〜ハムス〜タ〜♪」

そう、その歌が。

歌うなよ。余計頭の中をループするだろ。

このアトラクションの中で働いてるキャストさん、この歌で洗脳されてそうだな。

…さて、それはともかく。

「…寿々花さん、この次は…」

「そうだなー…。…ハムラッシュ・マウンテンに乗ろう」

やっぱり忘れてない。

普段から、その記憶力を別のことに使ってくれたら良かったんだけどな。

世界中ハムスターの歌で、多少俺の心臓は浄化されたが。

しかし、まだ2連チャンジェットコースターで負ったダメージは、完治していない。

どうする…?またしても、ガイドブックの出番か?

「え、えぇと…。その前に、この近くで…他に乗りたいって言ってたアトラクションは…」

「あ、そうだ。こっちに先に乗ろうよ」

と、寿々花さんの方から別のアトラクションを提案してくれた。

やった。そう来なくちゃ。

ハムラッシュ・マウンテンを後回しに出来るなら、どんなアトラクションでも構わな、

「ハムーテッド・マンション。999匹のハムスターのおばけがいるアトラクションなんだって」

「…」

…違う。そうじゃない。

ジェットコースターじゃないなら何でも良いと言ったけど、でもおばけなら良いとか、そういうことじゃないから。

畜生。このお嬢さん、怖いものに対して抵抗がなさ過ぎるぞ。

本当にお嬢様なのか?

「あなたが千匹目の仲間に迎えられる、だって。私達もハムスターのおばけになれるかなー」

「…ハムスターは無理だろ…」

一人で行ってこい、とも言えず。

寿々花さんに引き摺られるようにして、俺はハムーテッド・マンションに強制連行された。

…もう、ずっと目ぇ瞑ってようかな。

勿体無いのは百も承知だけど、これ以上俺のトラウマを増やすよりはマシだと思う…。