アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「ちょ、ちょっと待て。寿々花さん」

「なーに?」 

「ポップコーン、食べたくないか?」

そう尋ねると、寿々花さんの顔がパッと輝いた。

よし、これだ。

「ポップコーン?うん、食べたい」

「じゃあ、買いに行こうぜ。この近くの…ハムタジーランド・エリアの近くに、限定味のポップコーンを売ってる店があるって」

「わーい。行くー」

実はハムタジーランド・エリアも、そんなにここから近い訳じゃないのだが。

近いってことにして、何とか絶叫系アトラクションから逃れたかった。

うーん、姑息。

でも、九死に一生を得た気分だった。

ポップコーンくらい可愛いもんだよ。なぁ?

三大マウンテンに比べたら、何でも可愛いよ。

そんなこんなで、ポップコーン売りのワゴンを見つけた。

園内に、このようなポップコーン売りのワゴンをいくつか見かけたな。

このポップコーン、売り場によって売ってる味が違うらしいぞ。

で、ここにあるワゴンに売ってるのは、限定味のポップコーンらしく…。

「見て見て、悠理君。ひまわりのタネ味のポップコーンだって」

「…」

…それ、もうひまわりのタネ食ったら?

どんな味なんだろう。ひまわりのタネ味のポップコーン…。

自分から誘っておいてなんだけど、絶対普通のソルト味とかキャラメル味の方が美味しいと思うんだ。俺。

しかも、このポップコーン…。結構高いのな。

バケット付きで3000円だってよ。

こんなところに遊びに来て、物の値段の話をするのはみみっちいって分かってるけど。

それに、夢のハムスターランドに来たら、財布の紐が緩むのも重々承知している。

が、それにしてもポップコーンで3000円は、さすがに手が出ねーわ。

寿々花さんにだけ買って、俺は買わなくて良いや…。

と、いうつもりだったのに。

「寿々花さん、あんただけ…」

「えーっと、ポップコーン、このおっきい奴二つください」

勝手に注文してやがった。

おい、嘘だろ。

寄りにもよって、3000円のバケット付きの方を買いやがった。

せめて、その400円の小さい紙筒に入った方にしてくれたら。

しかし、時既に遅し。

首から提げるポシェットのように、可愛らしいハムスターの顔を模したバケットを二つ、受け取り。

「はい、悠理君」

寿々花さんは、そのうちの一つを自分の首にかけ、もう一つを俺に手渡した。

バケットには、ほかほかと温かいポップコーンが、これでもかとたっぷり詰まっていた。

…買っちゃったよ。

これ二つで6000円…。ハムスターの商売はボロいな。

「…どうも…」

もらった以上、突き返すことは出来なかった。

食べ切れるのか…?この山のようなポップコーン…。

しかも、全部ひまわりのタネ味…。

「ぽりぽり。美味しいね、これ。ひまわりのタネ食べてるみたい。ぽりぽり」

寿々花さんは夢中で、ポップコーンを齧っていた。

あんたは躊躇いがないなぁ…。いつだって。

「…」

俺も試しに、自分のバケットからポップコーンを摘み、一口食べてみた。

ひまわりのタネなんて、と内心小馬鹿にしていたが。

香ばしくて軽い食感で、意外なほどに美味しかった。

馬鹿にして済みませんでした。ちゃんと美味しかったです。