アンハッピー・ウエディング〜前編〜

結果。

ハムスターの宇宙は、予想以上に強烈だった。

「わーい。楽しかったねー、悠理君」

「はぁ…はぁ…」

満足そうな寿々花さんの横で、俺は必死に深呼吸をして息を整えていた。

心臓が…。心臓が、まだばっくばく言ってる。

やべぇよ、あれ…。暗闇のジェットコースターって、あんなに恐ろしいものなんだな。

レールが目の前に見えてたら、まだ「次は右か」とか、「そろそろ下に落ちるな」とか、心の準備が出来るけど。

暗闇でレールが見えないと、そういう心積もりも出来ないじゃん?

結果、ひたすらハムスターに良いようにぶんぶん振り回されてた。

心臓が、いくつあっても足りません。

畜生、情けないぞ…。寿々花さんは、こんなに余裕綽々だっていうのに。

俺がこんな体たらくじゃ、全然格好がつかないじゃないか。

…それなのに。

「よし、それじゃあ最後のマウンテン乗りに行こうよ。えーと…ハムラッシュ・マウンテンだっけ」

などと、恐ろしいことを口にしている。

まだあんの?このジェットコースター地獄。

そういや、三大マウンテンなんだっけ…。

無理。この状態でもう一回、別のジェットコースターなんて乗ろうものなら。

いよいよ、俺の心臓が止まってしまう。

「ちょ、ちょっと待った。寿々花さん」

「ほぇ?」

呼び止めたは良いものの、何と言って誤魔化すべきか。

素直に、「ちょっと疲れたから、ジェットコースターはしばらく勘弁してくれ」と言えたら良かったのだが。

残念ながら、俺のプライドが許さなかった。

「え、えぇと…。ハムラッシュ・マウンテンは…。こ…ここからはちょっと遠いみたいだから、先に別のアトラクションに乗っていかないか?」

もっともらしい理由を捻り出し、三大マウンテン制覇を後回しにしようとした。

我ながら姑息だけど、だって仕方ないだろ。

初めての絶叫系アトラクション2連続で、気力と体力が削られまくってるんだよ。

「遠いの?」

「遠いよ…。ほら、ハムラッシュ・マウンテンがあるハムッターカントリー・エリアは、ここから反対側だろ?」

「本当だー。いっぱい歩かなきゃいけないね」

「だろ?だから、この近くのアトラクションに乗りながら、ゆっくりハムッターカントリー・エリアまで行こうぜ」

ガイドブックのマップを見せながら、俺は寿々花さんを説得した。

良かった。

三大マウンテンを隣接して建設しなかったのは、ハムスターランドの優しさだな。

離れてくれてて、助かったよ。

「じゃあ、この近くの…ハムスター・ツアーズに乗ろっか」

ちょっと待て。それも絶叫系だろ。

ジェットコースターに乗りたくないんじゃない。絶叫系に乗りたくないんだ。俺は。

何とか気を逸らせないか。絶叫系以外に、何か。

こんなときの為の、ハンディガイドブックだ。

穴が空くほどガイドブックを睨み付け、丁度良いものを見つけた。