アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「…よし。あんたがまずすべきことは、食材への謝罪だ」

食べられないものばっか作って、食材が泣いてるよ。

チョコデニッシュなんてきっと、「そのまま食べて欲しかった」と訴えてるだろうに。

ごめんな。俺だってそのまま食べてあげたかったよ。

アレンジなんかしなくても、そのままでも充分美味しいもんな。チョコデニッシュ。

まさか、ラーメンの具材にされるとは思ってなかっただろうに。

つーか、ラーメンのトッピングにチョコレートって何なんだ?

スープの熱でチョコが溶けて、ドロドロになりそう。

そして、出来上がったのが寸胴鍋いっぱいの…魔女の秘薬という訳か。

悲惨としか言いようがない。

俺が止められなかったばかりに、こんなことに。

「食べられないもの作ってごめんなさいって、食材の皆さんに謝れ」

「でも食べられないものは何も入ってないから、食べようと思ったら食べられるんじゃ…」

「一縷の望みに賭けるな。食べられるかこんなもの」

口に入れた瞬間、あの世の縁が見えるわ。

「素直にごめんなさいしろ」

「ごめんなさい」

宜しい。

申し訳ないが、この寸胴鍋いっぱいの…生ゴミ。

後で袋に3重くらいに入れて縛って、ゴミステーションに捨てに行ってくるよ。

この匂い、迂闊に外に出したらテロだぞ。

で、次に。

「部屋中に散らばってる、このゴミは何なんだ?」

昨日折角、フローリングの床をモップ掛けして綺麗にしたのに。

そんな俺の努力を嘲笑うように、あっという間に散らかってるんだが。

これは俺に対する嫌がらせなのか?

「ゴミじゃなくて、桜の花びらだよ。公園に行って拾ってきた」

拾うな。

「何で桜の花びらなんか…」

「花を飾ろうと思って。道端にたんぽぽとか生えてたら良かったんだけど、なかったから、桜だったら今咲いてると思って」

犯行動機を説明してくれてるんだろうけど、悪いけど俺にはさっぱり分かんねぇわ。

このお嬢さんが何をしたいのか、さっぱり分かんない。

誰か説明してくれないか。本人に聞いても、いまいち要領を得なくて。