アンハッピー・ウエディング〜前編〜

家を出てから、数時間後。

俺達は無事に、ハムスターランドの門の前に到着した。

「悠理君、着いた。着いたよー」

寿々花さん、大はしゃぎ。

はしゃぐのは良いけど、迷子にはなるなよ。

ここまで来ると、ほっと一息つけるな。

どうなることかと思ったけど…ちゃんと辿り着けた。

迷わずに真っ直ぐ来れた、とは言い難い。

案の定、電車の乗り換えでちょっと戸惑って。

分からないまま迷子になるよりはと、素直に駅員さんを捕まえて、尋ねた。

親切な駅員さんで、田舎者の俺にも丁寧に教えてくれたよ。

お陰で、開園前に辿り着くことが出来た。

やれやれ。来るだけで疲れる。

…って、それは良いんだけど。

「…降ってきたな。雨…」

「長靴履いてくれば良かったねー」

本当にな。

かろうじて、折りたたみ傘持ってきておいて良かった。

俺か寿々花さん、どっちかが雨男、雨女だったということで。

天気予報は大外れ、案の定雨が降り始めてしまった。

幸先悪っ…。

「…って、寿々花さん。あんた傘は?」

俺が折りたたみ傘を開いている横で、寿々花さんはぽやんとしたまま、雨に打たれていた。

「ふぇ?」

「傘だよ。折りたたみ傘…」

「持ってくるの忘れちゃった」

「…」

…柿の種やスルメイカは持ってくるのに、折りたたみ傘は持ってきてないのかよ。

逆だろ、普通。

…あぁ、もう仕方ない。

「俺の傘使えよ、ほら」

俺は寿々花さんに、自分の傘を差し出した。

男モノの無骨な黒い傘だけど、無いよりはマシだろ。

「でも、そうしたら悠理君が濡れちゃうよ」

「俺は良いよ、別に。あんたが濡れて、風邪を引くよりマシだ」

最悪俺は、熱を出してもホテルで寝てれば良いんだから。

寿々花さんが風邪を引くよりマシ。

「遠慮せずに使ってくれ。パークが開いたら、真っ先に傘を買うよ」

「そっか。ありがとう、悠理君」

「良いよ」

「じゃあ、一緒に入ろうか」

…は?

寿々花さんは俺から傘を受け取り、俺の横にピッタリとくっついてきた。

…所謂、相合い傘、状態。

…えぇっと、そういう意味で貸したんじゃないんだけど。

一人で使えよ、って意味で渡したんだけど?

「悠理君はいつも、準備が良いね」

「…そりゃどうも」

なんかもう、突っ込むのが面倒になってきたので。

…このままで良いや。

結果的に二人共濡れずに済んだから、それで良しってことで。