アンハッピー・ウエディング〜前編〜

座れ、と言ったのは正座しろという意味なんだが。

何故か体育座りしている。

まぁ良いや、この際。座ってるならそれで良い。

尋問開始だ。

「一体これは何なんだ?」

俺はまず、紫色の煙を発するどんぶりを指差した。

「えーっとね、ラーメン」

俺が見たのは、ラーメンとは程遠い何かだったよ。

「私の好きな、めるちゃん正麺バター醤油味だよ」

と、嬉しそうに教えてくれた。

そんな味あるの?

醤油と…豚骨くらいしか知らなかったわ。俺。

不覚にもちょっと美味しそうと思ってしまった。これが本当に、バター醤油味ならな。

「これ…袋麺の奴?」

「袋?」

「5食入り1パックの?」

「うん、それ。いっぱい食べるかなーと思って、全部開けた」

5食入りの袋麺を、一度に一人で5パック全部消費するとは。

食えねーよそんなに。贅沢過ぎるだろ。

そんなに大量に食べたら、途中で味変しないと飽きないか?

何処から持ってきたのやら、寸胴鍋を持ち出してきた理由が分かった。

そりゃ5食全部調理するなら、それなりに大きな鍋じゃないとな。

「で、何をどうしたら…こんな有り様になるんだ?」

「えっ?」

えっ、はこっちの台詞なんだよ。

袋麺だぞ?パッケージに作り方書いてあるじゃん。

作り方と言っても、そんな大層なものじゃない。

お湯沸かして麺を茹でて粉末スープ入れたら、それで出来上がりだ。
 
何も難しいことなんかない。小学生でも出来る。

まかり間違っても、魔女の秘薬にはならないはずなんだよ。

「普通に作っただけじゃ、美味しくないかなーと思ったから…」
 
出た。

料理に慣れてない人に限ってやるんだよ。アレンジ。

アレンジするのは結構だけど、まず基本的な作り方を熟知してからやろうな?

「何を入れたんだ?」

「えーっとね、色々入れたよ。コンビニで買ってきたものたくさん。板チョコとチョコデニッシュと、チョコナッツティーとクッキーと…」

およそ、ラーメンには合いそうもないものが大量投入されている。

チョコばっかなんだけど、好きなのだろうか。

バター醤油味のラーメンと、甘ったるいチョコのコンビ…。

…想像しただけで気持ち悪くなってくる。

「あと…ほにゃららとほにゃららを入れて、ちょめちょめしたら、これが出来た」

おい。ほにゃららとちょめちょめって何だよ。

言えないようなことなのか。そうなのか?

…まぁ、出来上がったこれを見れば、とても人に言えないようなものを入れたのは、一目瞭然だな。

食材への冒涜も甚だしい。