アンハッピー・ウエディング〜前編〜

雛堂の言う通り、ハムスターランドがリア充の巣窟なのだとしたら。

俺も雛堂も乙無も、全く縁のない場所である。

これまで一度も行ったことはないし、これからも…少なくとも、数年以内に行く機会はないと思う。

…そう、思っていたのだが。




昼休みに雛堂の愚痴を聞きまくった、その日の放課後。

「うんしょ、よいしょ、ほいさっ、と…」

「…」

「うーん。確かこの辺に…。…あれ?見つからないなぁ…」

…家に帰ってみたら、寿々花さんの姿が見えなくてさ。

玄関に靴はあるのに、声をかけても出てこなかったから。

家の中で迷子にでもなってんのかと思って、見に来たらこれだよ。

寿々花さんは、客間の押し入れに頭を突っ込んで、もぞもぞしていた。

…何やってんの、これ?

俺はどうしたら良いんだ?

見なかったことにして、洗濯物取り込もうかな…。

…でも、どう見ても寿々花さんには、何か用事があるらしい。

寿々花さんの世話係として、彼女が何かしようとしているのを見過ごすことは出来なかった。

もし寿々花さんの身に何かあったら、それは俺の責任になるしな。

「…あんた、何やってんだ?」

「ほぇっ」

俺が後ろから声をかけると、寿々花さんはびくっ、として。

頭を上げた拍子に、ゴツン、と押し入れの中段に後頭部をぶつけていた。

「いたぁぁ」

「あー、はいはい…」

「頭ぶつけちゃったよぅ…」

半泣きで振り返る寿々花さんであった。

「悠理君が突然声をかけるから。びっくりして、びくって。悠理君が声をかけるから」

俺のせいなんですか?

「分かった、分かったよ。俺が悪かったから」

「頭の上で、鶏がぴよぴよしてる」

ひよこじゃね?

鶏はぴよぴよとは鳴かんだろ。

「あんたが変なことしてるからさ…。気になって声をかけたんだよ」

「そうなんだ」

「…で、さっきから何やってんの?」

押し入れ漁り?

それとも、例のホラー映画の影響か?

我が家の押し入れにも、祟りを起こすつもりか?

やめてくれよ。

「秘密基地でも作ってんのか?」

「ふぇ?ううん。探しものだよ」

「…探しもの…?何探してるんだ?」

「スーツケース」

…スーツケースだって。

スーツケースって、何で…と少し考えたけど。

「家出…とかじゃないよな?」

俺に愛想を尽かして、しばらく実家に帰らせて頂きます。ってこと?

「?何で家出するの?」

「いや…。そうなのかなと思って」

「大丈夫だよ。家出なんかしないから…。家出したくなったときは、ちゃんと悠理君に言うよ」

「おぉ、そうしてくれ」

家出するならしても良いけど、ちゃんと「これから家出します」って言ってからしてくれよ。

突然いなくなったら、心配するからな。

…って、そうじゃなくて。