アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「ふーん…。そりゃまぁ、邪魔して悪かったな」

「えぇ。邪魔しないでください」

「邪魔はしねぇけどさ、昼飯は食っといた方が良いと思うぞ。五時間目、体育だし」

そうだな。

しかし乙無は、これだから人間は、みたいな顔でこちらを一瞥し。

またそっぽを向いて、窓の外に視線を戻した。

…今、邪神イングレア様とやらと交信してるんだろうか。

「…まぁ良いや。好きにさせとこうぜ」

「だな」

あいつの中二病は、いつものことだから。

格好つけて昼飯我慢して、五時間目の体育で貧血起こして倒れたとしても。

それは乙無の責任であって、俺達は関係ないから。

「…それはそれとして、自分もハムスターランド行きてぇぇ!」

…また、その話に戻ってくるのかよ。

雛堂も大概しつこいな。

「愚痴ったって仕方ないだろ。いつか、大人になったら行けば良いじゃん」

ハムスターランドは逃げないよ。多分。

余程のことがない限り、廃園になったりはしないだろう。

「違うんだよ、星見の兄さん。あんたは分かってない」

「…何を?」

「若いうちに行くから、価値のある場所なんだよ。星見の兄さんだってちっちゃい頃は、ゲームコーナーの百円のメリーゴーランドが楽しみだったろ?」

「…え?それは…まぁ、そうだな」

「でも、大きくなった今は全く興味ないだろ?そういうことだよ。若いうちに行くから価値のある場所なの」

子供の頃の方が、純粋に楽しめるってことだな?

成程、そう言われたら…分からなくもないかも。

遊園地は遊びに行くところだからな。

遊ぶ体力と元気があるうちに行かないと。あんまり年を取ると、興味がなくなるかもしれない。

そういうことってあるだろ?数年前まではめっちゃ楽しくて、ハマってたことでも。

何年か経ったら飽きたり、別のことに興味が移ったりして、楽しかったはずの趣味が全然楽しくなくなる、あの現象。

振り返ってみると、自分があんなに夢中になってたのか分からないんだよな。

それが大人になるってことなのかもしれない。

「青春は、味わえるうちに味わっておくべきものなんだよ。分かるだろ?ハムスターランドだぜ?」

「は、はぁ…。俺も行ったことないから知らないけど…」

「きっと、都会育ちのお洒落な女子高生や女子大生がわらわらいるんだぜ。夢色空間かよ!」

…なぁ。

雛堂が弟に嫉妬しまくって、ハムスターランドに行きたいと喚いていたのは。

…そういう理由なのか?

女性との出会い?の為に?

「…煩悩にまみれてんな、あんた」

「軽蔑した目をすんなよ。別にナンパしようってんじゃない…。ただ、いかにもリア充が集まる場所だろ?この目で見てみたいだけだよ」

やっぱり煩悩にまみれてるんじゃないかよ。

雛堂…あんたは、生涯ハムスターランドには行かない方が良いんじゃないか?