アンハッピー・ウエディング〜前編〜

と言っても、妬んでも僻んでも仕方ないからな。

時代は移り変わるもんなんだよ。

「仕方ねぇよ、雛堂。世の中そんなもんだ」

今はまだ、東京旅行だけどさ。

更に何年かしたら、今度は海外旅行になってるかもしれないぞ。

有り得ない話じゃないんじゃね?最近、小学生のうちから海外旅行に行くの、珍しくないんだろ?

「納得出来ねぇぜ。こうなったらチビが旅行に行ってる間、チビのポテトチップス勝手に食ってやろ」

大人気ないぞ。雛堂。

「なぁ、乙無の兄さん。兄さんもそう思わない?」

雛堂は、乙無に話を振った。

さっきから乙無は、窓の外を眺めながらずっと黙っていた。

昼休みなのに、お弁当も食べずに。

またハンストか?

何やってんだろう、ツッコミ待ちなんだろうかと思いながら放置してたけど。

「…うるさいですね、さっきから」

乙無は不機嫌そうなツラをして、じろっと雛堂を睨んだ。

「話聞いてくれよ、乙無の兄さんも。つーか兄さん、今日昼飯どうしたの?」

「良いですか。僕はさっきから、邪神イングレア様と交信しているんです」

などと供述しており。

「交信って?何やってんの?」

「頭の中で喋ってるんです」

こ、こいつ。脳内に直接…!?…って奴だな。

「喋ってんの?神様と。頭の中で?」

「えぇ。イングレア様はいつでも、僕達邪神の眷属と頭の中で交信することが出来るんです」

ドヤッ。

ふーん。便利な携帯電話…ならぬ、携帯脳内交信…?

「神様の相手ばっかしてねーで、自分の相手もしてくれよ。乙無の兄さん」

「たった今、イングレア様から直々に、大事な指令を受けたばかりなんです。あなたの戯れ言に付き合っている暇はありません」

「ほぉぉ…?神様から大事な指令って何よ?」

雛堂が尋ねると、乙無はよくぞ聞いてくれた、とばかりに。

胸を張って、ドヤ顔で答えた。

「本当は、人間には教える必要はないんですが…。あなた方には特別に教えてあげますよ」

いや、俺は別に聞きたくないんだけど。

「聖神ルデスの巫女を始末せよ、との命令です」

なんか、また中二病全開ワードが出てきた。

ルデス?巫女?

それ、ちゃんとこの世に実在してる?

それこそ、乙無の頭の中にしか存在してないんじゃね。

「この近くの時空に、ルデスの巫女が彷徨いているそうです。イングレア様が察知されました」

「ほーん。巫女って始末しなきゃいけないもんなの?」

「当たり前じゃないですか。聖神の巫女共は、僕らの敵です。イングレア様の再臨を拒み、僕達眷属の邪魔をするんです」

つまり巫女って言うのは、乙無と乙無の神様にとって敵なんだな。

だから始末しなきゃならないって?

「奴ら、普段は僕達の目を盗んでこそこそしてるんですが…。こうしてイングレア様が存在を感知したからには、その巫女を始末するのが僕の役目です」

「神様が見つけたんなら、神様が自分で始末すれば良いのに」

確かに。

「ご自慢の神様なんだろ?その…インエクレア?様は」

「イングレア様です。勝手にチョコレートのお菓子みたいにしないでください。不敬な」

じろっ、と雛堂を睨む乙無だった。

よく分からないけど、乙無も大変だな。