アンハッピー・ウエディング〜前編〜

翌日の昼休み。

「あぁぁ、旅行行きてぇぇぇ!」

雛堂は机に突っ伏しながら、そう喚いていた。

…藪から棒に、何だよ。

「いきなりどうしたんだよ…。喚くなよ、昼飯が不味くなるだろ」

「いやぁ、いつも美味しそうだぜ。星見の兄さんのお弁当は」

そりゃどうも。

ちなみに今日は、昨日の夕飯の残りの春巻き弁当である。

勿論、寿々花さんの分も同じお弁当を作っている。

いつ、「やっぱり飽きたから、もうお弁当は要らない」と言われるかと思ってんだが。

未だに言われないんだよな…。意外とハマってるんだろうか。

…それはともかく。

「旅行だよ、旅行。自分も旅行行きてぇなぁ」

旅行だって?

…偶然なんだろうが、何だか俺にとってはタイムリーな話題だな。

いや、俺には関係ないよ。ハムスターランドに行くのは寿々花さんであって、俺じゃない。

「自分も、って…他に誰が行くんだ?」

「下のチビだよ。今六年生でさ。来週から修学旅行なんだってよ」

「あぁ、成程…」

小学校の修学旅行ね。

懐かしいなぁ…。一泊二日で京都だったよ。

貧乏な家で育って、旅行なんて贅沢とは縁遠かった俺にとっては。

一泊二日の京都旅行でさえ、一世一代のイベントだったものだが。

この学校の女子生徒達は、たかが入学オリエンテーションで、三日間の京都旅行だもんな。

格が違うってもんだ。格がな。

「良いよなぁ。自分も旅行行きたい」

「仕方ないだろ?修学旅行なんだから…。自分だって、小学生の時修学旅行行っただろ?」

中学の時だって行っただろ。

平等だよ。

「違うんだよ、星見の兄さん。自分が言いたいのはそういうことじゃない」

「お、おぉ…?」

どうしたんだ、そんな真剣な顔で。

「ただの修学旅行なら、自分だって何も言わなかったさ。むしろ、チビが一匹減って静かになって良いわーって思うくらい」

「はぁ…。ただの修学旅行じゃないのか?」

「そうだよ。奴ら、何処に行くと思う?」

旅行の行き先のことか?

「定番は…京都とか広島とか…九州方面か?」

「ちげーんだよ。奴ら、なんと東京に行ってハムスターランドで遊ぶんだとよ」 

「…ハムスターランド…」

これまた、妙に聞き覚えのある…。

非常にタイムリーな話題が飛び出してきたな。