アンハッピー・ウエディング〜前編〜

「折角もらったんだから、行ってみたらどうだ?」

「ふぇ?」

「ハムスターランド。チケットを腐らせるのも勿体ないだろ」

幸い、ここからなら電車を乗り継いで行ける距離だ。
 
優待チケットのお陰で、入園料は無料だし。

そもそも、お金には困ってないからな。

折角お姉さんが送ってくれたんだから、行ってくれば良い。

「でも、私行ったことないよ?」

「それなら、なおさら丁度良いじゃないか。ハムスターランドデビューの良い機会だ」

「そっか…。知らないところに行くの、ちょっと怖いな…」

毎日平気な顔してホラー映画を見てる人に、人並みに「怖い」という感情があったとは。

ホラー映画は怖くないのに、ハムスターランドは怖いのか?

雛堂がたくさんDVDプレゼントしてくれたからさ…。これから毎日ホラー映画鑑賞会だよ。

俺は出来るだけ逃げるつもりなんだけど、寿々花さんに「一緒に観よう」ってせがまれるんだよなぁ…。

それもこれも、寿々花さんにホラー映画を布教した雛堂のせいだ。

雛堂の罪は重い。

「でも、悠理君が一緒なら大丈夫だよね」

…ん?

「一泊二日で、2日分のチケットがついてるって。それに、ハムスターランドセレブホテル?にも泊まれるらしいよ」

日帰りじゃねぇの?泊まりなんだ。

セレブホテルって何…?

なんか、凄く豪勢なホテルなんだってことはよく分かる。

「今週末にでも行こっか。悠理君と一緒に旅行に行くの、初めてだねー」

「…」

「じゃ、そういうことで…。シャボン玉やろっと」

話、まだ終わってない気がするんだけど。

シャボン玉に戻る前に…あんた、さっき何て言った?

悠理君と一緒に旅行…?

…もしかして俺、一緒に行くことになってる?

いやいや、まさか。そんなはず。

…多分、クラスメイトか誰かを誘っていくんだよ。そうに違いない。

女子部の同級生なら、旅行慣れした生徒が多いことだろう。

国内のハムスターランドなんて、ご近所感覚なんだぜ。きっと。

そういう人と一緒に行くべきだよ。旅行慣れした人が一緒についていれば、初めてでも安心だからな。

ましてや、修学旅行以外まともに旅行したことがない俺なんて、とんでもない。

きっと聞き間違いだな。

「悠理君、ボトルちょうだい」

「あ、うん…。…風呂場の手桶に、予備の石鹸水を作ってあるから。なくなったら詰め変えれば良いからな」

「うん、分かったー。ありがと」

じゃ、俺は寿々花さんが遊んでる間に、夕飯を作ってくるかな。

なんか色々聞きたいことはあるが、とりあえず全部後回しってことで。

考えない方向で行こう。うん。