アンハッピー・ウエディング〜前編〜

ほぼ半日かけて、俺は外で買い物を済ませた。

制服やら鞄やら靴やら、注文していたものを取りに行っただけじゃない。

引っ越しの荷物を片付けるのに必要なものも、ホームセンターに行って買ってきた。

俺の部屋、まだ家具が揃ってないから。

ベッドやクローゼットやカーテン、その他必要な家具を購入し、後日家に送ってもらうよう頼んだ。

値段は気にしなくて良い。

生活にかかるお金は全部、無月院本家様が出してくれるからな。

財布の中身を気にしなくて良い買い物というのは、小気味良いもんだな。

初めてだよ。こんな体験。

折角だから、店で一番高い家具を頼んでやろうかと思ったが。

所詮近所のホームセンターでは、一番高い家具と言ってもたかが知れていた。

結局、手頃な値段の家具を選んでしまった。

貧乏性が身に沁みついている俺である。

ついでに、帰り道にスーパーに寄って食料品を買った。

明日の朝、洋食の朝飯も作れるように、食パンやバターやジャムを揃えた。

よし、こんなものだろう。

ようやく今日の買い物終了。

さすがに、半日あちこちを走り回って疲れた。

両手に大量の重い荷物を持って、それでもタクシーに乗るのは勿体無い気がして。

律儀にバスに乗って、バス停からてくてく歩いて家に帰ってきた。

…すると。

「…ん?なんか焦げ臭い…」

玄関を開けた瞬間に、焼け焦げたような匂いを感じた。

…一体何の匂いだ?これは。

家中に香っていた、新築の匂いは何処へやら。

何かが焼け焦げた匂いが立ち込めていた。

そこで俺は、一つの可能性に辿り着いた。

…ま、まさか。

「…火事…!?」
 
そう気づくや否や、俺は両手の荷物を玄関に放り投げ。

急いで廊下を走り、匂いの出処である奥のダイニングキッチンに飛び込んだ。

「おい、大丈夫か!?」

お嬢さんの身に何か起きたかもしれない、と慌てて駆けつけてみると。

「あ、悠理君だ。お帰りー」

お嬢さんはけろっとした顔で、キッチンに立って。

片手にお玉、片手にフライ返しを持ち。

何処から持ってきたのか、寸胴鍋を火にかけていた。

その寸胴鍋はグツグツと煮え滾り、紫色の煙を立ち昇らせていた。

…えーっと。

…何処の世界の魔女ですか?